奈良市 令和3年10月 議案審査特別委員会 11月02日
奈良市 令和3年10月 議案審査特別委員会 11月02日
【1,請願第1号 「司法を尊重し仲川元庸奈良市長への債権放棄を行わない旨」に関する請願書について】
【2,議案第102号 権利の放棄について】
【1,請願第1号 「司法を尊重し仲川元庸奈良市長への債権放棄を行わない旨」に関する請願書について】
◆内藤智司
今回のこの議案については、私自身はこの斎苑については推進の一人として進めてきた一人だ。その中では、当時この用地取得の価格について高いか安いか、相当な議論をしたのも覚えている。しかし、そのときの我々に与えられた情報の中で、合併特例債、それから使用期限、いろんなことを考えたときに、そのときの判断として市民に対しての利益は何だと考えたときに、政治判断として、この事業を進めていくということで、私も賛成した一人だ。
しかし、今回はその「高い」というところに対してスポットを当てられて、今、裁判結果が出たが、それを放棄する、しない、なぜ市長だけ?ということのスポットに対しての議論をしていかなければならない、本当につらい議案だと感じている。その中で、議案が出された以上、私たちはそれに対して真摯に議論をして答えを出さなければならない。
もう一つは、全国で初めての事例であるこの判決に対して、議案に対して答えを出していかなければならない。これが後世へ、全国の事例として残っていく。このことは、本当に我々としても重要な判断をしていかなければならないと思う。
では、請願第1号 「司法を尊重し仲川元庸奈良市長への債権放棄を行わない旨」に関する請願書について、抜粋しながら質問する。
半ばにコンプライアンスの話が出ている。「コンプライアンスが重視される現代にあって、仲川市長の行動はもちろんのこと、最高裁判決を議会までもが軽視するような事態となれば、奈良市全体が日本社会から取り残されることとなります。」という表現がされている。
コンプライアンス、法令遵守、これは法令だけではなく社会規範やルール、モラル、マナーなどを含む。そのため、このことについて議論をすること自体がすなわちコンプライアンス違反になるとは思われないが、ここでの表現は何を意味するのか?
◆大西淳文委員
コンプライアンス、法令遵守ということは、この文脈では、議会が、提案された議案を議論することは一切否定していないと。むしろ専門家の意見をしっかりと確認し、短期間ではなく徹底した議論を行ってほしいと考えている。
◆内藤智司
抜粋の中に、「最高裁判決を議会までもが軽視すること」という表現だが、このことについて議論すること自体が判決を軽視することにはならないと考える。なぜ軽視することになるのか。もう一つは、奈良市全体が日本社会から取り残されることとなるとは具体的にどのようなことを言っているのか?
◆大西淳文委員
議会の議論を否定しているわけではない。もっとしっかりといろんな内容を確認して、徹底した議論を行ってほしい。
◆内藤智司
次に、一部抜粋だが、「今回の最高裁判所の判断を無視することは、日本国憲法の精神を軽視することになります。」とあるが、日本国憲法の精神を軽視することについて、三権分立における司法の役割を軽視しているという趣旨と解釈するが、三権分立において議会は立法の役割も定められているということでは、日本国憲法の精神を軽視することにはならないと考えるが?
◆大西淳文委員
司法、裁判所の機能は、個々の具体的な事例に法を適用し、公に判断を行うことにある。司法の範囲は民事・刑事事件だけではなく、公務員の行為に対する適法性に関する行政訴訟にも及ぶ。
今回の住民訴訟を通じて、新斎苑の土地売買について、奈良市長の行為の適法性について最高裁判所の結論は出ている。その司法の判断を尊重しないで、裁判所の判断を否定するような議決を行うことについて、三権分立を理解せず、憲法を軽視しているということを説明している。
それと、行政学の権威で、弁護士で多くの住民訴訟をされてき「た阿部泰隆先生」が自治総研通巻462号に寄稿された内容の一部を紹介する。
「住民訴訟は、首長や議会の多数派が行った民主主義の行きすぎを司法が違法という基準でチェックするのであるから、その成果である地方公共団体の権利を再度民主主義と称して放棄するのでは、民主主義の行きすぎ是正という司法の機能が抹殺され、地方議会は司法権の上に鎮座することになり、その結果、法治国家違反を助長することになるからである。これは違憲である。その上、首長が自分の賠償責任を免除してくれと議会に頼めば認めるというのでは、泥棒が勘弁してくれと言えば、泥棒仲間の裁判官が認めるのと同じである。法治国家ではあり得ないことである。」と記されている。
これについては、公益財団法人地方自治総合研究所のホームページで公開されている。
◆内藤智司
なかなか難しい答弁なので、またかみ砕いて質問するが、今回の市長を泥棒に見立てるのはいかがかと思う。三権分立の中において行政は法の支配下にあると思うが、議会は立法権がある中においては、そこに対して物を申していくという立場においては、私はあり得ると思う。
その判断が、また司法において判断されていくということはあり得ると思う感じた。
もう一点、抜粋のところで「仲川市長だけが特別に債権放棄を認められることは差別であり、地方公務員法に反します。特別職である仲川市長は地方公務員法の罰則の対象外ですが、仲川市長の指示の下に議案の策定などに関わる職員は法律に抵触するおそれがあります。」と書かれているが、市長だけが特別に債権放棄を認められることは差別であり、これは市長と一般人という社会的身分によって態度を変えるという趣旨と思われるが、本議案は、債権放棄の根拠は社会的身分ではないので差別に当たるとは考えられないと思うが、ここでの表現は何を意味するのか?
◆大西淳文委員
裁判所は市長の不法行為を指摘し、共同で不法行為を行ったと判決文に明記されている。共同性を確認しているにもかかわらず、判決文にある相手方仲川だけを免責するのは差別であると考える。
民法の一般原則によれば、故意または過失がある場合には他人に与えた損害を賠償しなければならないのであって、社会的身分によって分けられる、差別できるものではないと考えている。
【2,議案第102号 権利の放棄について】
◆内藤智司
資料要求も一部したが、今回の新斎苑建設には非代替性があると主張されているが、当時も一旦あそこの土地を藤原前市長が決められて、仲川市長が21年に当選して、あそこは適地ではないということで一旦白紙撤回をされた。その間、25年にもう一度変えるときにいろんな候補地を探されていたということも、そのときの議会でも相当議論されたと思うが、改めて、他の候補地であったものを排除した理由については?
◎向井政彦副市長
平成21年度以降、奈良ドリームランド跡地も含めて延べ21か所の候補地を検討していた。
検討項目としては、土地取得の可能性、地権者が大変複数であるということであれば非常にその辺も厳しい。それから、周辺に住宅地の有無などの周辺環境、一応、250メートルということを目安にしていた。それから、幹線道路からの進入の可能性、生活道路を霊柩車等が通るというのは抵抗が強いということで、生活道路でない幹線道路から進入できるのがいいと判断した。
場所は、地域的に奈良市内で東西南北が偏るというのは少し問題だと、利便性にも問題があるということで、そういう立地条件。そして、用地取得費、これもいわゆるこちらの盆地側でいくと、今1,514円だが、到底そんな金額では手に入らないということだと思うので、そういった経済性。
その他、もちろん必要面積がないと駄目なので、そういうものを検討した上で他の候補地は困難ということを判断した。
◆内藤智司
次に、今回この土地の価格というものが非常に大きな課題となっているが、土地の価格の根拠、そこになぜ公共用地取得の事例を加味したのか?
◎向井政彦副市長
基本的には不動産鑑定価格をもって適切な価格としようというのが基本だ。市がそういう民間の取引価格を把握するというのはなかなか難しい。そういう意味でも、不動産鑑定価格を参考にした。
今回の場合は平成29年度の都市計画決定後に不動産鑑定を、2社に鑑定を依頼した。しかし、国交省の基準でいう近傍類地とは言い難いものであった。まして、すぐ近くに奈良県の事例があったということで、時点修正もした上で鑑定価格との平均を取った。不動産鑑定で近傍にもちろん民間の取引事例があれば、当然それで交渉に臨むというのが普通の場合だと思っている。今回の場合はそれがなかった。
最終的には近傍類地、本当は近傍類地だけでもいいと考えたが、金額を下げるということも含めて、当初から鑑定価格などでということも覚書を交わしていたので、その鑑定価格を含めて、前地権者の取得価格よりも大分低かったが、納得いただいた。
◆内藤智司
もう一点、土地の購入価格について、1億6700万円と埋設物の撤去の1億4000万円とで、基本計画時は土地関係経費として3億円、この合計で調整したように言われていたが、この辺についてどうだったのか?
◎向井政彦副市長
基本計画の3億円を示したときは、これは予算でも何でもなかった。全体の事業費を出すための概算の枠として示したもので、そのときは西山も含まない、いわゆる建設地だけの半分程度の金額を3億円と概算として出した。土地購入価格については、約1億6700万円という数字を出した。
撤去費用については、当初は約1億円強という見立てだと聞いていた。その後、調査が進む中でだんだん額が増加して、そのちょうど土地交渉の最終の段階の時点ではたまたま1.4億円という数字があったが、その後またそれも上がって、結局2億円を超えた。
ちょうどその時点で、こちらが1.4億円、土地購入が1.6億円ということで、足して3億円にした、という話には大変こちらが驚いた。
◆内藤智司
この数字に関しては、多分何回聞いても同じ答弁の繰り返しになるかと思う
最後にもう一点、市の用地取得事務取扱要領との関係については?
◎向井政彦副市長
奈良市には庁内の事務処理要領として奈良市用地取得事務取扱要領がある。この中では、不動産鑑定価格を基準にしようというものだ。
しかし、この要領は一般的な用地の取得を想定したものだと思う。今回のような近傍類地に民間の取引がない、また、その事業の緊急性、重要性、特殊性、そして市民生活への影響度、そういうものが格段に高い事例は想定されていないと思っている。そういうことで、今回はさらに上の国交省の近傍類地の価格ということから、約1億6700万円という数字を設定した。
◆内藤智司
土地価格の決定について、いろんな庁内の中の議論はあったと思う。その答弁に、今副市長、異論はなかったという説明だが、鑑定価格を超えて決めるに当たって、本当に庁内で異論というか議論はなかったのか?
◎向井政彦副市長
一番の目標は、新斎苑事業を進めるということであったことは確かです。その中で、どうしても土地を手に入れなければこれが進まない。もうそれならば進める必要がなくて、またゼロから考える、そしてまた非常に時間のかかる土地収用にいくという2つの方法があったことは確かだと思う。しかし、その判断は市民の利益にはそぐわないという判断があった。
そういうぎりぎりの条件の中で、説明できる価格ということで、鑑定価格と近傍類地の実態の価格というものを平均したことは、皆様に理解していただけるものと思っていたし、議会においてもその説明で議決もいただいた。
そういう面では、価格についての判決は大変残念だが、これはもう判決が出たものなので、その金額を重視していくという姿勢です。