奈良市 令和3年10月 議案審査特別委員会 11月05日
奈良市 令和3年10月 議案審査特別委員会 11月05日
【市が土地を購入する際には基本的には鑑定価格で購入するとして、今回の新斎苑用地は、例外的な対応として鑑定価格を超える金額で購入した】
◆内藤智司
例外が鑑定価格の3.3倍にもなっているが、この金額は正当な理由により算定されたものであるとの市の主張についても、何度となく繰り返し答弁されてきた。
奈良市が土地を買いに行く現場は今も幾つかあると思うが、公共事業用用地の買収の交渉とは、地権者に対して公共事業としての必要性を説明し、理解していただくために、何度も何度も足を運ぶと聞いている。これまで大原則である鑑定価格から用地交渉が始まり、繰り返しずっと鑑定価格で売ってくださいと担当者は頭を下げ、公共事業の必要性を訴え、交渉を続けてきたはずだ。そして鑑定価格で交渉は終わる。
また、収用事業においても税法上の優遇もある。資料要求した、過去5年間で公共施設用用地買収において鑑定価格を上回って土地を購入した事例がないことが、地権者に対して協力していただくという姿勢で交渉してきたあかしではないでしょうか。しかし、新斎苑のこのニュースによって、「私のところも新斎苑と同じように鑑定価格の3.3倍で買ってくれ、できるやろ」と言われ、収拾がつかないということも今後は生じてくることは容易に想像できる。実際、そのようなことが現場では既に起きているのではないか。
新斎苑用地取得の事例がほかの様々な用地交渉の現場に影響を及ぼし、混乱を招いているとしたら、どのように考えるか?
また、今後、どのような基準で用地買収を進めるのか?
◎向井政彦副市長
本市の公共用地取得については、奈良市用地取得事務取扱要領にのっとり不動産鑑定価格を上限とする、この基本的な考えは変えるつもりはない。しかし、今回の確定判決を受けて、近傍類地としての事例がない場合や特段の緊急性、特殊性がある場合などは、第三者の意見を取り入れられるような仕組みづくりも重要ではないかと考えている。奈良県や他市の事例も参考にしながら、価格決定の体制などについて検討する。
現在、新斎苑の用地取得を例に、他の用地取得現場で地権者の方から鑑定価格を超えての買取りを申し入れられる事例があるということは、私は聞いていない。事業を進めるには、用地確保は最も重要で、職員にとってもそれが大変厳しい作業であると認識している。そのようなことを招いているということであれば、大変心配するし、状況も確認したい。
いずれにしても、こういった本当に例外的な特殊事例は、その場合の価格設定については、体制をしっかりつくって、その趣旨を庁内にも周知していく必要がある。
◆内藤智司〈意見・要望〉
今回の用地買収、土地取得に対しての法律的な見方、それから監査委員さんからの意見、これを本当に慎重に、我々がどこまでそれを掘り下げて判断できるかというのは非常に難しいと思うし、今もそのさなかにいるというのが現状だと思う。
意見として、今回の権利放棄の議案は、まだ審議が続けられている。しかし、やがて審議が終わり、採決の結果で今後の用地取得の現場は大きな影響を受けるということは、避けられないと思う。これまで鑑定価格が上限とされてきた交渉が、その3.3倍からスタート、交渉となり得ることで用地取得の大きな負担になることも、今回の採決には重要な要素であると思う。副市長は、今回の議案の提案説明において、職員の名誉を守らなければならないと言った。それ以上に今後の公共事業への影響を考えて、最善の方法を選択すべきではないかと考える。
議案の提案説明で、市長は1円の利益も得ていないと。公務員である以上、そのことは当たり前の中で行わなければならないが、市民の最大限の利益のために長年の課題を解決した、その責任を果たしてきた、それを評価されるべきであると思う。
市長は、行政のトップリーダーとしての役割、これが一つあると思う。そして、我々と同じ選挙で選ばれる政治家としての立場があるというふうに思います。副市長が今まで繰り返してきた、市民の最大限の利益を守るために長年の課題を解決されてきた、これは、行政のトップリーダーとして評価すべきだし、大変な事業をこなしてこられたと私も思っている。
その一方、選挙で選ばれた政治家として、その実績を市民の多くの方に評価されてきたのも事実だと思う。連合会の43名の有志の方から認められて署名されてきたのもそうだし、平成29年の選挙、先日の選挙、これに当選されてきたのも、やはりその実績を評価された政治家としての仲川市長だと私は思う。そういった意味では、市長は市長なりに、今回の事業において、きちっとその評価を、対価をもらっているのではないかと思う。
今回の鑑定価格の3.3倍の適正性も主張されてきた。不動産鑑定価格を超えた背景として、特に用地の非代替性、取得の緊急性があったということ、それから合併特例債の活用期限、市の財政負担の軽減、それから、早く造ることによって市民の負担を少しでも減らす、そのことを繰り返し答弁されてきたと思う。まして先日、ここに元地権者の方が陳情に来られた。今も、副市長も我々も、地権者もこの事業に対して協力者であったという認識もしている。
私は、もし今回、権利放棄というものを3人にするならば、一定の理解はできるのかなと思っていた。しかし、ここで市長のみということに関しては、どう考えても協力していただいたことと副市長等が言われる3.3倍の適正性、これらを加味すれば、今回の議案というものはどうしても腑に落ちないというか、理解できないところがある。
そういったところで、今回のこの議案に対しては、職場、庁内のこれからの行く末、これからの公共事業、元地権者の思い、そういったことも全て、我々は最高裁の判決を基に審査、判断していかなければならないと思っている。