奈良市 令和3年6月 定例会 06月04日

奈良市 令和3年6月 定例会 06月04日

【県域水道一体化について】
◆内藤智司
 国は、水道広域化推進プランを令和4年度末までに策定するよう求められている。令和2年9月30日時点で大阪府、兵庫県、広島県、香川県、佐賀県で既に策定され、先行事例の香川県は、事業統合後10年を目途に料金統一する目標で進んでいると聞いている。また、広島県でも、統合による連携に参加するのは15市町で、統合以外の連携は広島市、呉市、尾道市など6市町であり、統合する15市町でも料金は別の経営統合で行っていくという方針である。
 平成29年10月の奈良県・市町村長サミットでは、令和8年の経営統合を目指していき、その後10年以内のできるだけ早い時期に水道料金を統一していくとある。しかし、この1月に調印した覚書では、統合時に水道料金を統一するとある。
 この覚書以降、料金値下げをした大和高田市や県域水道一体化に参加しない大和郡山市があり、統合効果の財政シミュレーションとの整合が取れていない。今後、このような整合の取れていないものを精査して検証していくとある。
 しかし、行政の職員だけの判断、例えば投資規模は、今、年間160億円の投資で効果があるとされているが、果たしてその投資規模は適正なのか、その投資額なら施設を健全に維持できるのかなど、専門的判断ができる会計士、大学教授または市民目線からの意見などを参考にして、様々な角度から統合の妥当性を判断すべきと考える。
 1点目、第三者委員会を設置して、幅広く意見を聞いて審議していくべきと考えるが、第三者委員会の設置については?
 また、その検証した幾つかのプラン、県域水道一体化後の料金、奈良市単独経営、県域一体で経営し料金は別などを公表して、奈良市民のメリット、デメリットを市民に通知した上で、パブリックコメントや議会の審議が必要となる。
 2点目、市民の多くが県域水道一体化についていまだ知らされていないと考えるが、市民に対してどのように説明していくのか?
 奈良市の水道事業も、大正11年に供給開始して間もなく100年を迎える。この1月に調印した覚書では、令和7年からの事業統合で新たな企業団が事業を行い、奈良市としての歴史に幕を閉じてしまうことになる。
 3点目、県域水道一体化に奈良市が正式に参加することを決めなければならない時期は?
◎市長(仲川元庸) 3点目の質疑対して
 奈良市にとっての効果、また投資水準等については時間をかけてしっかりと検証していくことが重要であり、参加の判断は慎重にしなければならないと考えている
 正式な参加を決める具体的な時期については決まっていないが、今年度からその時期について検討していく。
◎企業局長(池田修) 1点目、2点目の質疑に対して
 第三者委員会の設置については、専門的な知識や学識経験者による検証は必要と考えており、設置時期や審議の内容の精査を行った上で、第三者による審議会というものを設置したいと考えている。
 市民に対しては、当然、奈良市の水道事業にとって極めて重要なことなので、「市民だより」、「上下すいどうだより」、企業局ホームページなどで県域水道一体化になった場合と単独でいった場合の料金水準の比較、あるいは事業計画の比較、災害等の対応などを積極的に情報提供したい。
◆内藤智司 
 市長の答弁の中で、参加する時期については協議会で検討し、決定していかなければならない」とのことだったが、局長からは「令和4年度に基本協議会の立ち上げを進めている」聞いたが、これはやはり市長に答弁をいただいたように、検証をきちっとし、慎重に判断した上でその時期を決めていくということで理解しておく。
 三郷町において、平成30年度に上水道を値下げし、下水道を値上げする料金改定がされた。奈良市と同様、下水事業で料金値上げをしなければならない状況にあったようだ。奈良市と同様に料金収納を一緒にしていることから、これを一体化運営として町民の家計には影響しないように、水道料金の値下げを実施したものと推定される。しかし、現状の会計状況を見ると、水道事業会計は欠損金が発生している。累積しているので、ここ数年間は純利益なしで事業運営されていると思う。
 水道事業の欠損金は、三郷町のお金が足りないということを示しており、収益で費用を賄えていない。本来なら料金を値上げしなければならないが、令和7年まで内部留保で何とか耐えて、水道事業広域化によって料金値上げをしなくてもよいとも捉えられる。
 平成30年の時点において水道広域化の話は出ていたので、三郷町の頭の中には水道広域化は視野に入っていたと思う。今回の大和高田市の水道料金の値下げも、広域化との直接的な因果関係を証明することは難しいと思うが、結果を見れば、三郷町は水道事業会計の状況をすぐさま改善することを避けて、また、大和高田市のように更新計画を見直して、水道広域化を期待しているのは間違いない事実だと思う。
 局長は、大和郡山市のことは駄目だと言い、大和高田市の料金値下げはいいと言った。三郷町のように欠損金を出して、内部留保金を崩して運営している会計はいいのか?駄目なのか?様々な思惑が見えてきくるので、しっかり各市町村の状況を開示して、チェックし、公正なルールが必要になると思う。
 奈良市は、須川ダムほか自己水源確保のために、これまで600億円の負担金の償還がようやく終わり、年間30億円の設備更新、アセットマネジメントを計画している。参加するほかの市町村もアセット計画を提出することがまず先決だと思う。そこから私は財政シミュレーションを本来組めていくのではと思う。
 県域水道一体化については、いまだ議会にも説明はされていない。12月に私が代表質問し、3月に議論したその後も、この6月においてでも行政側からは何のアクションもなく、これはやはり奈良市全体の市民の重大な問題なので全員協議会があってしかるべきと思う。
 確かに、この7月に市長も我々議員も改選を迎えるわけだが、それは別の話だ。行政と議会というものの節度を保たなければならない。提供し、それをいち早く、選挙があるならばそれを争点として、私は市民に広く公表すべきだと思う。いまだその域に達していない。その検証、精査ができていないというのも一つの現状だ。
 局長は、市民への告知はホームページ、市民だより、水道だよりで広く広報していきたいと言ったが、直接企業局が、行政が市民の膝元に行って、市民の中に入って説明し、市民の質問にも答え、意見交換などは絶対必要だと思うし、パブリックコメント等の行為も私は必要だと思う。
 議会で過半数が取れるから、もう市民には説明は不要だということはなく、これから以降、市民に対しての説明行為は慎重に考えていただきたい。
 先般の、下水道料金の値上げをして健全な運営を維持していく。行政に詳しい市民の方さえ、水道料金が上がったと思っている。誰も下水道料金が上がったからとは思わない。それはなぜか?やはり一緒に徴収しているからだ。三郷町も一緒に徴収しているから、市民に影響のないところで下げて、上げてと、いうことだ。そんなことを広報紙だけで説明が達成できるということはあり得ない。
 既に、参加する各市町村から財政シミュレーションが提出されている。年間投資額は160億円で、県下の施設を維持管理できるとされている。少なくとも参加するとしている市町村の会計を、それまでに上げたり操作したりとかすることのないように、第三者がきちっとこの会計を管理すべきだ。
 葛城市、大淀町が料金統一をしないことで、奈良市が県下で最低料金となり、統合後は値上げをすることになる。それ以外の市町村は値下げとなる。さらに、他市では更新計画を先延ばしして、市民、町民の利益を守っている。私はこれ、当然だと思う。三郷町が駄目だとか、大和高田市が駄目だとか、そういう話ではないと思う。それぞれの首長は、自分たちのまちの市民の利益を守る、これは当然の行為だと思う。
 奈良市も当然、奈良市民の一軒一軒の利益を守っていくのが我々の仕事だと思う。奈良市民の利益を最大限守ることが、私は奈良市長、奈良市企業局長の義務ではないかと思う。このことに対して、一言いただきたい。
◎市長(仲川元庸)
   単独で存続した場合、もしくは広域化をした場合それぞれで、しっかりと将来にわたって安定した経営をしながら、しかも安全な水道水を供給するという、そのミッションをしっかりと実現できるためにはどのような方策が望ましいのかということを、まさにこれからしっかりと議論を深めていくために、議員指摘の点も含めてしっかりと検討を進めていきたい。