奈良市 令和3年9月 定例会 09月13日

奈良市 令和3年9月 定例会 09月13日

【1,4期目の就任に当たり、奈良市の将来像について】
【2,デジタル社会への対応について】
【3,財政健全化、公共施設の統廃合について】
【4,地域自治協議会について】
【5,新クリーンセンターの建設について】
【6,脱炭素カーボンニュートラル社会への対応について】
【7,県域水道一体化(統合の考え方)について】
【8,奈良市決算審査意見書の受け止めについて】


【1,4期目の就任に当たり、奈良市の将来像について】
◆内藤智司
   市長は、これまで3期12年間奈良市政を担ってきた。1期目就任当時、「3期12年かかってもできないことは何年やってもできない」と多選批判をされていたことは、今回の改選に当たり議論になり、記憶に新しいところだが、見事再選を果たされ、12年間を経て4期目の就任に当たり、新たな奈良市の将来像を描いたと思う。これまでにない新しい奈良市の未来像については?
◎市長(仲川元庸) 
 4期目に当たり奈良市の将来像については、本市はこれまで観光都市、もしくは関西における良好な住宅都市として発展をしてきた。一方で、来年まち開きから50周年を迎える平城・相楽ニュータウンのように、良好な住宅都市のいわゆるポストニュータウン問題にどのように対応していくのかということに、今我々が直面をしている。
 少子高齢化の進展により、これまで奈良の屋台骨を支えてきたいわゆる良好な住宅都市を次の第2ステージへとしっかりと進めていくためには、新たな基盤整備等様々なアクションプランが必要であると認識している。今回、木津川市などとも取り組む新たな事業についても、その一つのモデルケースとして力を入れていきたい。
 これまで3期12年間にわたり、特に行財政改革という観点で様々な事業の見直しや予算の削減などに取り組んできた。これらについては、引き続きしっかりと財政規律を高めながら取組を強化していくべきものであると同時に、歳出の抑制ということだけでは行財政改革には限界があるという認識にも立っている。
 そのような視点に立ち、やはり新たな歳入を図っていくという取組が特に重要であると認識をして、今回の4期目においては、特に企業の誘致、また雇用環境の整備に重点的に取り組んでいくことを目標としたい。
 また、今後の奈良市のまちづくりを考える中において、2030年度の開業を予定しているJR新駅の周辺整備については、今後の奈良の大きな発展につながる起爆剤として、特に新しい産業基盤の創出につながる事業と位置づけ、力を入れていきたい。
 コロナ禍により、密の状況があり大都市のデメリットが周知され、それに伴い働く方々の働き方、またライフスタイルについても大きく変化をしているこの1年余り。そのような状況の中においては、適度な規模を持つ地方都市としての魅力という観点では、本市のポテンシャル、また優位性というものは大きなものがあろうと認識する。加えて、2025年には大阪・関西万博が開催され、世界レベルでの人・物・文化が行き交うことが予想され、他都市にはない奈良の文化の蓄積を生かす好機でもある。
 このような点を踏まえ、今後様々な施策を総動員して、人が中心の未来社会をデザインし、住みやすく選ばれるまちを目指したい。

【2,デジタル社会への対応について】
◆内藤智司
 市長は、「人間本位のゆとりと豊かさを実感できるデジタル社会の実現を目指す」と言っていた。これについての説明を求めたい。
 また、デジタル社会において、デジタルツールに不慣れな人などが取り残される心配があり、どういう対応を考えているのか?
◎市長(仲川元庸)
 デジタル技術の活用を進めることにより、いつでもどこでもオンライン上で手続ができ、市民にとっても来庁する手間が必要なくなるなど、手続の簡素化、また簡略化、迅速化等により時間や場所の制約から解放されるというメリットを、市民にしっかりと享受してもらうことが何よりも重要である。
 さらには、デジタル技術のコミュニケーションツールとしての可能性から、福祉や教育、また産業振興等各分野における一層の活用で、一人一人の市民のニーズに合ったサービスを選ぶということも可能になってくると思う。
 このように、今後本市が推進をするべきデジタル社会の実現は、市民の視点で多様な幸せを実感できる市政を目指していくことが重要だ。
 一方で、人間本位の、と銘打ちしたのは、三重県でも「あったかいDX」という取組が目指されているように、いわゆるデジタル技術に不慣れな方々もしっかりと想定して、例えば先般のワクチン接種事業などに際しても、公民館や出先機関等での様々なサポート体制や、また様々な最新技術を活用するための講座など、いろいろな機会を通して多くの市民に先進技術に触れてもらう、また、そのメリットを享受できるように支えていきたい。

【3,財政健全化、公共施設の統廃合について】
◆内藤智司
 公共施設の老朽化は奈良市においても重要課題の一つである。このことは幾度となく繰り返し質問してきたが、具体的な方針を立てなければならない時期に来ているのではないか?早期に計画的な対応が必要と考える。施設の老朽化による市財政への負担増と奈良市の厳しい財政状況の現状を踏まえると、施設の統廃合の計画は奈良市の     財政健全化の柱となるべき課題である。市長としての見解は?
◎市長(仲川元庸)
 財政状況が厳しい中において施設総量の見直し、また今後の人口の動態や地域の状況、将来の利用者ニーズなどが大きく変化をしていく中、今後どのような施設を維持していくのかを検討し、絞り込んでいくことが重要である。これらは目の前の維持管理コストのみならず、将来の更新コストの縮減にもつながる大変重要な施策である。
 そのような状況の中、いわゆる公共施設の最適化という問題については避けて通ることができない重要な課題である。こうした問題については、中長期的な視点を持った計画的な対応が望ましいと考えており、次期行財政改革の計画の中でもしっかりと議論を深めていきたい。
◆内藤智司
   公共施設の統廃合について、昨年の12月定例会の代表質問で私は、公共施設の統廃合管理計画は片手間でできるものではないと指摘した。行政のスリム化を考えるなら、再度専門的な組織で進められるべきではないかと意見した。次期行財政改革を検討するに当たって、専門部署を組織する考えについては?
◎市長(仲川元庸) 
 様々な部署にまたがるトータルコストという視点での様々な連携や調整が必要であることから、いわゆる調整機能を果たす役割が重要である認識している。
 これについては、本年4月に組織改正により財政課内に行財政改革推進室という新たなセクションを設け、ここが庁内の行革の様々な取組の計画の取りまとめであったり進捗の管理を図る、いわゆる調整役として位置づけをした。
 当然ながら、それぞれの事業の所管課において責任のある対応を行うということが大前提だが、庁内をまたがるようなもの、また全体的な進捗管理ということについては、当該推進室を設置したことにより、より力強く推進をしていくことが可能になると考える。

【4,地域自治協議会について】
◆内藤智司
 市長は、平成29年に奈良市の成長戦略として、「新しい自治の仕組みである地域自治協議会の創設を積極的に支援、地域密着で市民生活を支えるプラットフォームを確立させる」と掲げ、「地域生活の中で日々生まれる様々な課題に対し行政だけでは対応できないこと。一方で地域の担い手不足も深刻で、これらの課題解決のため、それぞれの分野で活動している地域の様々な団体が一つのプラットフォームを構築し、行政とも密接に連携を図りながら、自分たちの地域の未来を自分たち自身でしっかり選び取っていく、そして自ら行動していく。その取組を行政がしっかり支えていく」としている。今日までの成果と今後の方針について、まず、令和元年に先行して設立された11地区の地域自治協議会は今年度で3年目を迎えるが、どのように評価するか?
 これまで地域自治協議会の設立に向け、市は準備交付金や立ち上がり支援交付金などを支援してきた。この立ち上がり支援交付金は、地域自治協議会の認定を受けてから3年間交付されることとなっている。令和元年に設立された11地区は今年で3年が経過するが、令和4年度以降の支援については?
 現在、設立に向けて準備している地区、設立を検討している地区など、今後の地域自治協議会の考え方については?
◎市長(仲川元庸)
 これまでの3年間、11の地区で取り組まれた事例の評価については、地域自治協議会を設立した地域においては、自分たちの住むまちの将来像を描き、行政に頼らず、できることは自らの手でということをモットーにまちづくりに取り組んでいると認識する。
 地区自治連合会など、主要4団体など各団体との連携をより強固なものとするために調整を進めている中で、地域によっては従来型の活動から脱却することに難しさを感じている地域もあると聞いている。
 そのような中において、連携を図るために組織内での協議を活発にしている地域や、また運営資金を確保するために受託事業の模索、コミュニティビジネスの開拓など、様々な角度で今後の在り方を熱心に研究している地域もあると認識する。
 地域課題の再認識や、また今後の対策をどのように打っていくのかということなど様々な観点から、地域の方がこの自治協議会という仕組みを通して、まさに我が事として主体的に地域づくり、地域自治に取り組んでいると高く評価する。
 次に、3年目が経過した4年目以降の交付金の在り方については、地域自治協議会を円滑に運営していくためには、人材に係る経費や事務所運営に係る経費など様々な費用が直接経費以外にもかかると認識している。これまで自治協議会については、行政のいわゆるイコールパートナーとして、これまで市が担ってきた市民だよりの配布や避難所の開設業務などを請け負ってもらい、独自にコミュニティビジネスの視点からも自主財源の確保にも努力をいただいている。
 今後の自治協議会の自主的な運営に向けては、独自の事業の開発についても引き続き検討してもらいながら、地域の福祉の分野など事業を安定的に運営していく中で、4年目以降についても一定の支援を継続していくべきと認識している。
 今後の地域自治協議会の考え方については、著しい高齢化の進展やそれに伴う人々の生活様式の多様化などにより、地域の中でどのようにコミュニティーを再度融合していくか、地域のつながりをより高めていくのかという観点が重要だ。
 これらについては、奈良市内、地域ごとに様々な地域特性がある中で、行政から一本調子の政策で一くくりに対応していけるものではない。それぞれの地域特性に最も当事者として携わっている地域の方が、自発的に活動を起こし、知恵を集め、地域力を高めていくという取組は、これからの時代に特に必要性が高まっていくと考え、地域自治協議会の取組は今後ますます重要なものになってくる。
◆内藤智司
 成長戦略の結びに、自ら行動していく、その組織を行政がしっかり支えていくとあったが、29年のとき、3年間、立ち上がり支援交付金を令和元年度に設立した11地区の地域自治協議会に交付したが、今現在では来年に自立するのが難しいと思う。行政として、設立した協議会が自立するためのサポートをどのように分析されたのか?
 4年目を迎えるに当たり、これまでのサポート体制を振り返り、自立を促すために何が必要か?
◎市長(仲川元庸)
  3年間の立ち上がり支援が行われたが、まだまだ支援が要る。地域ごとに様々な運営、また活動を進めているに際してのお手伝い、また情報提供などについては、各地域のコーディネーターがそこに関与している。
 また、市役所としての総合的な窓口という観点では、従来のように縦割りではなくて庁内横断で、ワンストップで地域の様々な問合せや要望を受けられるようにという調整も図った。
 また、一方で、自治協議会の財政的な自立をどのように図っていくかということについては、引き続き大きな問題である。
 市民だよりの配布など従来行政が担ってきた様々な業務を地域に開放するという形で、いわゆる委託もしくは受託という形で独自財源を確保してもらう取組についても、この3年間で一定進んできた。これらについては、引き続きどのような事業の種があるのかということについては、協議会ともしっかりと議論を深めていきたい。
 また、地域によっては、企業などからの寄附など新たな自主財源を獲得する取組は、お金という形ではないにしても、企業の協力によって、企業の負担によって様々な先進的な取組を展開していこうというチャレンジをしている地域も出てきている。
 必要な経費をどのように賄うかということについては、民間の助成金の情報やコミュニティビジネスも含めて、今後も引き続き検討していくべきだ。
 そういったことを進めていきながら、安定して自治協議会が運営をしていけるということが奈良市全体の福祉の増進にもつながっていくと考えており、4年目以降の継続的な支援策を現在具体的に検討している。

【5,新クリーンセンターの建設について】
◆内藤智司
   大和郡山市の離脱等から一転して、奈良市においてもゼロベースなのか、いや、市長はまだ七条で広域化を目指していくとの答弁もある。しかし、クリーンセンターはどこにおいても建てなければならない。令和元年6月定例会の本会議において、新クリーンセンター建設におけるごみ発電等を利用したまちづくりについて、神奈川県厚木市で行われている再生可能エネルギーとDCグリッドを利用したスマートコミュニティ構想の事例を交えながら市長の考えを聞いたが、改めて新クリーンセンターを核とした周辺整備についての市長の考えは?
◎市長(仲川元庸)
 最新のクリーンセンターについては特に、単にごみを焼却する施設というだけにとどまらず、エネルギーを回収する拠点という位置づけがされており、ごみ焼却時に発生する熱を利用したごみ発電、もしくはその熱源を生かした温水提供など、資源の循環という観点でも大きな役割を果たしている。それらを周辺の公共施設等に供給しているような事例も多くある。
 また、これらをいざというときの災害時の防災機能として生かしておられる事例もある。ある自治体においては、フェーズフリーという、いわゆる平常時と災害時の両方のニーズを満たす取組を日頃から意識して取り組んでいるところもあり、平常時には地域の皆さんにスポーツやイベントなどで利用してもらい、災害時には避難所として利用するというような事例も聞いている。また、近年各地で多発している豪雨等による浸水被害、また河川の溢水など様々な災害の事例を考慮して、今後、本市としても検討していくべき重要案件である。
 新しいクリーンセンターについては、従来のいわゆる嫌悪施設という位置づけではなく、持続可能なまちづくりという観点を踏まえながら、脱炭素もしくは自然との共生、また資源の循環や災害の対応、ひいては地域の様々な社会課題の解決など新たな価値をいかに付加していくかということが重要であり、この新施設が地域のまちづくりの核となる、そのような位置づけを目標としていくことが望ましい。こういった考え方も地域の皆様方にしっかりとお伝えをし、皆様方と共に計画づくりに努めてまいりたい。

【6,脱炭素カーボンニュートラル社会への対応について】
◆内藤智司
 今般、脱炭素社会はどこへ行っても合い言葉のように社会の中に浸透している。北極地方においては信じられない速度で氷が解け始め、シベリアでは永久凍土がクレーターと共に地表に表れ、今までにないウイルスが発生し村ごと移住を余儀なくされているなど、世界における気候変動は大災害を引き起こし、多くの生命が脅かされている。
 政府は、今後5年間に政策を総動員し、人材、技術、情報、資金を積極支援していくとしている。既に先行市では、脱炭素社会への取組の専門部門がスタートしているらしい。本市の脱炭素社会への取組は?
◎市長(仲川元庸)
 近年の豪雨災害の頻発化など気候変動に伴う様々なリスクが顕在化する中において、その結果として生物多様性の損失、また廃棄物の大量発生など、地球環境が危機的な状況にある。
 このような状況に対して、昨年の6月に、国においては気候危機、また10月には2050年のカーボンニュートラル宣言をされた。今年の4月には2030年に温室効果ガスを46%削減し、さらに50%に挑戦するということを国は宣言した。こういった社会全体のライフスタイルの変容に向け、我々自身も地方の立場として大きく考え方の転換が求められている。
 本市が策定している「奈良市地球温暖化対策地域実行計画」においては、市域の温室効果ガス排出量の削減目標については、中間目標としては、2030年度までに基準年度である2013年度比で30%削減を掲げている。また、長期計画としては、2050年度までに基準年度比で80%の削減を目標としているが、今後カーボンゼロということも含めて、温暖化対策のさらなる推進を図っていかなければならない。また、国が示しております地域の脱炭素ロードマップに基づいた、いわゆるゼロカーボンアクションについても、本市として取り組んでいきたい。
 いずれにしても、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、脱炭素事業に意欲的に取り組んでおられる市民の支援、また国の様々な交付金等の事業、財源の活用など、総合的に対応を図りたい。

【7,県域水道一体化(統合の考え方)について】
◆内藤智司
 令和3年1月の覚書では、「企業団設立の令和7年度から事業統合し、料金統一を基本とし、将来の料金上昇を抑制する」とある。今回の覚書によるスキームは事業統合であり、各市町村の料金水準、投資規模、財政状況を公平に保って合わせていくには最も難しいスキームだ。
 広域化、共同化のスキームはいろいろな形があると思う。今回のように特別地方公共団体をつくらなくても、広域連携によるシステム・事務の共同化や、技術協力や支援などによる広域化・共同化のスキームがあり、広島県の事例のように広域化、共同化には協力して段階的に参入していく方法もあると考える。特別地方公共団体までつくってそこに参入するとなると、奈良市民の民意である市議会の意見が反映できなくなる。
 末端給水事業を行っていない県だけでは、水道事業の持続的運営は難しいと考える。本市はもちろん奈良県下で唯一の中核市であり、末端給水事業の広域化、共同化に協力や助言をする立場にある。しかし、本市にとって一番いい参加方法について、議論がもっと必要ではないかと感じている。そこで、事業統合だけでなく経営統合や広域連携のスキームなどを総合的に検討していくべきと考えるが、統合の考え方については?
 また、令和3年8月2日に奈良県広域水道企業団設立準備協議会設立総会と、第1回奈良県広域水道企業団設立準備協議会が行われたと聞いている。その第1回の協議会では今後のスケジュール案が示され、「令和4年度に一体化後の施設整備計画や財政運営、組織体制等を取りまとめて基本計画を策定するとともに、基本協定を締結することを基本とする。」となっている。
 令和4年11月に基本計画案、基本協定案を作成となり、令和5年2月に基本協定締結となっており、市民、市議会への具体的な説明は令和4年11月になるのか。仮にそのタイミングでしか出てこなく、令和5年2月に締結となれば、議論する時間があまりにも短いのではないか。
 そこで、議会で議論できる時期については?
 次に、市民への広報について、現在あまり積極的に行われていないと感じているが、県域水道一体化は100年もの歴史がある奈良市の水道事業にとって大きな転換となる。これまで培ってきた奈良市の水道事業を奈良県全体の水道事業へと変化させる、奈良市民にとって大きな政策転換だ。今後の市民への広報については?
◎市長(仲川元庸)
   今回のこの事業統合というスキームについては、県が中心となって作成された素案だ。まだ協議会が設立され、議論をする場がようやくスタートした段階にある。今後は市町村側も主体的に投資の規模、また料金の抑制策などについてしっかりと議論を深め、事業統合という手法のメリット・デメリットを総合的に判断していくべき状況にある。
 今後、この事業統合のメリットをしっかりと見極めていくということが重要である。
 次に、議会で議論をする時期については、8月に協議会が設立され、今後のスケジュール案として、令和4年11月に基本計画、また令和5年2月に締結というものが示されているが、令和4年11月に基本計画や基本協定の案が出て、そして年が明けて令和5年2月に締結だと、僅かな期間しかないという状況だ。
 そういったことを踏まえながら、令和4年の2月に検討の中間報告を出そうという計画にもなっているので、随時、最終的な結論に至るその道中においてもしっかりと議論を深めていくということが重要である。
 本市の参画の是非ということについても、これまでも議会でも様々な意見を頂戴してきた。特に単独経営を継続していく場合と比べた水道料金のシミュレーションなどについては、まだまだ十分な検討がなされていないという段階にある。引き続き、今後の検討の中においては、市町村側がより主体性を持ってこの検討作業を進めていくということが重要になってくる。
 また、市民への広報は、将来の奈良市の経営、もしくは市民の皆様の生活にとっても非常に影響の大きい重要な政策であるので、今後、将来の投資水準、またそれに伴う料金水準、また統合の効果、メリット・デメリットなどについて、より丁寧に市民の皆様に広報をしていく必要がある。
◆内藤智司
 実務を担っている企業局長から、補足することは?
◎企業局長(池田修) 
 市長の発言に補足することは特にない。

【8,奈良市決算審査意見書の受け止めについて】
◆内藤智司
 地方自治法において、「市長は次の予算を議する会議までに議会の決算認定を付さなければならない、その際には監査委員の審査を受け、意見を付さなければならない」とある。議会としても3月の予算審議にあっては、監査委員からの定期監査、決算審査または包括外部監査などの意見は、審議を行うに当たっては重要な位置づけと受け止めている。
 市長は、奈良市決算審査意見書についてどのように受け止めているのか? 
◎市長(仲川元庸)
 地方自治法第233条第2項に基づき、決算関係諸表についてその係数の正確性を検証し、予算の執行または事業の経営が適正かつ効率的に行われているかどうかという観点で監査委員から出される。
 これらの意見については、適正な行財政運営を行う上で重要なものである。また、指摘事項については、各所管においてしっかりと見直し、是正をしていくよう努めていかなければならない。

◆内藤智司
 奈良市公営企業会計決算審査意見書において、水道料金と一括して徴収事務を行っている下水道使用料の徴収経費について、下水道事業会計は応分の負担をすべきである。それ以外にも、人件費、減価償却費、公営企業会計システムプロトタイプ導入委託料等の下水道事業会計と共通して発生する経費については按分すら行われていない。このことは、これまでも繰り返し指摘してきたが、水道事業会計と下水道事業会計には共通して発生する費用があり、この対象となる費用は人件費、物件費等の多岐にわたり、金額的な重要性も高いものと考えられる。しかし、現状では水道・下水道両事業会計のほとんどの共通経費を水道事業会計が負担しており、適切に按分計算がなされていない。企業局における共通経費の按分計算は、両会計の経営成績と財政状態の正確な把握にとって重要である。したがって、当該事業年度における両会計に専属する収益、費用の総額、人件費の総額、職員数の割合等当該経費の性質に従った基準によってこれを按分して整理し、経営成績と財政状態の正確な把握を通じて、効果的かつ効率的に事業を継続して運営されるよう要望する。とあるが、この指摘に対して企業局長のかんがえは?
また、今後どのようにしていこうと考えているのか?
◎企業局長(池田修) 
 この問題は、平成26年の下水道事業の公営企業化以来7年間の長年の懸案だった。
 下水道事業の経営が民間で言えば実質破綻の状態にある。それが7年、8年と続いているが、公営企業管理者として、赤字が続いて債務超過になっている。損益も、料金値上げをしたが、その前までは損益も全く収支が取れていない。平成15年から資金繰りのために資本費平準化債という借金をしていて、これは民間でいえばサラ金みたいなもので、ただ債務を先送りしているだけ、こういう状態にあった。
 そういう問題を解決するために、ずっといろんな効率化とか値上げとかもお願いしたが、この正常化を2年かけてやろうということで、令和2年度の決算書では若干例外的な処理をしたが、令和3年度の決算からは指摘のように下水道使用料の徴収に係る経費及びそれ以外の共通経費について、水道・下水道両事業会計で合理的な案分比率によって負担をしていくと、正常化するということを答えたい。
◆内藤智司
次に、決算審査意見書について、意見書の結びに県域水道の一体化のことにも触れられている。県域水道一体化のための判断において、共通経費を合理的な按分に基づき、財務諸表の情報を基に判断すべきであり、現状のまま県域水道を一体化した企業団が引き継ぐことの不合理性をなくさなければ後顧の憂いを断てない、いわゆる後々後悔するのではないかと記されている。
 また令和2年度において、下水道使用料徴収負担金を適正額の半分の約1億円しか計上できなかったとあるが、下水道料金の値上げにより令和2年度の純利益は約8億1800万円を計上されている。
 一方では、下水道使用料徴収負担金は毎年2億円ほどの経費と聞いている。なぜ適正額の半分の1億円しか計上できていなかったか、合理的な理由は?
債務超過の問題、資本費平準化債を借入れしないと資金ショートすることなどは別の問題であり、今回の合理性の理由ではない。
 現状の水道・下水道両事業会計の共通経費を水道事業会計が負担していることについては、3年度から正常化していくとの答弁だが、正常でなかったことを認めたということだ。法律、いわゆる地方公営企業法では、公営企業の会計は発生主義会計であり、年度で区分することとある。さらに、赤字により支払いができない場合は、支払えるまで債権として未払金に整理しなければならないとされている。このことは、平成26年に企業局になった際も議論されてきたと記憶している。見解は?
◎企業局長(池田修)
   決算審査意見書の最後の部分、一体化との関連でどう考えているかということについては、一体化よりも前倒しで、令和3年度決算から正常化していきたい。
 それから、決算審査意見書について、下水道使用料徴収負担金の計上についてどう考えているかは、要するに7年間続いた実質破綻状態を正常化するというので、今年料金値上げをして現金ができたからといって直ちに修正するということではなく、長期的な観点で、資本費平準化債を何としてもゼロにする。今年なりできるだけ早い時期にゼロにするという目標のために、2年かけて処理をした。
 共通経費を水道会計が負担していることは、これまでの下水道会計の実質破綻の状態を考慮すれば、私としては資金繰りを正常化するためにやむを得ない措置であったと考える。
 
◆内藤智司〈意見・要望〉
   デジタル社会の対応については、これからデジタル社会の流れが一気に進んでいくと思う。ただし、デジタルに対応できる人はどんどんそれに対応していけるが、その中でもなかなかそこに至らない人たちをどうするのかといった意味では、行政としてどの市民に目線を合わせていくのか、このことを見失わないように、できないところに対して目線を当てていくというのが私は行政の仕事だと思う。
 公共事業の統廃合については、庁内様々な部署の連携が重要であり、そのための調整機能の必要性を認識しているとの答弁だった。それぞれの計画が各論まで着実に進むように、その体制を取っていただくよう要望しておきたい。
 地域自治協議会については、長年この事業に対して奈良市の連合会と協議していきて、令和元年から今年で3年を迎えて、4年目はどうするのだという議論を今しているが、今年立ち上がった地区などは、やはりもともとの考え方が、3年間交付金、支援金を出すので3年の間に自立できるようにとあったと思う。
 それに対して、市がそれまでの3年間に、お金ではない自立ができるかといったサポートができていたか。それを今後つくろうとしている自治会・連合会・地区とか、これからやっていこうというところに対してどのようにサポートしていくのか、このことが私は最も重要であると思う。
 そして、行政側がすべきことは、事業化していくときにいろんな部署からその仕事を受託していく、そのことが可能なように、行政の中では横断的に、教育委員会も含めて、学校に用務員の仕事で入りたい、ではそこに予算を上げていこうという形で、行政の仕事を地域のできる人が受託する、そんな仕組みを私はつくっていくべきだと思う。だからこそ地域で地域のまちづくりができる!を目標に進められればと思う。そこの議論を、お金だけの支援ではなく、これからの協議会の在り方について考えていただきたい。
 現有施設について、23日に止まって、我々のところに副市長から報告があったのはそれから数日後だ。なぜ中核市の炉が全停止しなければならなかったのか。災害でもないのに止まる、このことは、奈良市以外から聞くと、「そんなことがあり得るのか?」、と言われた。それにもまして、炉を止めるときに議会に報告もなしに止める。こんなことがあり得るのかとも言われた。
 本当に議会と市長との両輪という中にあっては、その片輪が市長の頭の中にはないのか、一輪車で走っているような気さえする。そこのところはもう一回、議会というもの、市民というものをきちっと見定めて、中核市の炉が止まるということの重要性を認識すべきであって、今回のような形で止まるということは絶対にあってはならない。
 そして、なぜ今回止まったかというところについても、疑義を感じる。大阪の業者から受け入れられないよと言われただけで炉を止める必要が本当にあったのか。なぜ議会と議論しなかったのか。その時間はあったと思う。
 新クリーンセンターの建設地については、大和郡山市が離脱した、このことについても、本当に不思議だ。この広域化の勉強会というのは、奈良モデルとして、県と、斑鳩町、大和郡山市、奈良市でやられているはずの中で、県と大和郡山市が相談したのか、奈良市とどういう協議を経て離脱になったのか、その辺が全然分からない。
 まして大和郡山市は、「我々が入った、つくった3市でやっていたやつに奈良市と斑鳩町が入ってきて、今や奈良市がもう設備ありきで、どういう設備にするんだというところに進んでいるというところから、ひさしを貸して母屋を取られた」みたいな表現のされ方をしているが、そんな状況の中で勉強会が進んでいたのか。そこが私たちには分からない。このことは、今後のクリーンセンターの広域化も含めた在り方というものは、議会も含めて一緒になって相談していかなければならないのかなと思う
 県域水道一体化については、現状のまま県域水道を一体化して企業団に引き継ぐことの不合理性、この監査の指摘に対してきちっと検証していきたいと思うので、これは後の決算審査でまた議論をしたいと思う。
 決算書の受け止めについても、下水道事業にはほかにも重要な事項が指摘されている。例えば、営業外収益の会計方針が変更されたことにより将来負担比率に影響を受けるとも指摘されている。これも令和2年度から変更されたと聞いているが、このことについても後の予算決算委員会で明らかにしていきたいと思うが、私がなぜこんなにしつこく言うのかは、後に県域水道一体化の議論が控えているからだ。
 大和郡山市が28億円を一般会計に繰り入れた。下水道料金を上げて水道料金を下げて、一緒に徴収しているから、市民は上がったか下がったか分からない。奈良市は水道料金が上がったとみんな思っている。下水道料金が上がったのに。
 それと、26年に企業局に統合されたときは、その手前で下水道は2段階上げるという議会の了解まで得て、1段階上げたまま企業局に持ち込んだ。一般会計の繰入れを止めたいがために企業局をつくった。そのことによって、水道の利益で下水道の赤字を埋めていったということになるが、それを考えてみると、大和郡山市が28億円を持っていったと同時に、同じようなことを奈良市でもやっている。
 だから、徴収経費の2億円、5年たったら10億円か。人件費は今、試算で4億円ぐらい。それを案分したときに、5年たったら幾らか。では、例えば、減価償却とか全ての案分を、その頃からの積み上げを考えると、相当な金を企業局が払っている。そのことで、水道料金がもっと安くなったかもしれない。では、この先、統合して一緒にやっていくという水準が、その計算が違うデータになってくる。
 そういうことをきちっと議論しないと、これからの水道一体化の話ができないと思う。それは各市も、似たようなところがあってしかるべきだと思う。奈良市で理屈に合わない会計をしている以上、そこをむき出しにして各市町村がしないと、シミュレーションというのは出来上がっていかないと思う。