奈良市 令和4年 3月 定例会 03月08日

【1,市長の政治姿勢について】
【2,公共施設の老朽化について】
【3,県域水道一体化について】
【4,地域自治協議会について】
【5,新クリーンセンターの建設について】
【6,環境事業の今後の計画について】
【7,奈良市総合防災訓練の意義について】
【8,観光行政について】


【1,市長の政治姿勢について】
◆内藤智司 
 当初予算について、令和4年度の一般会計当初予算は義務的経費や継続的な事業を中心に編成され、特に大型事業がない予算とされている。予算規模は過去3番目だ。この要因をどのように捉えているのか?
   また、これらの増大に対しての対応はどのように考え、対策するのか?
◎市長(仲川元庸) 
 令和4年度予算について、その大きな要因としては、社会保障関係経費や制度変更によるものが大きい。
 例えば、平成25年度の予算と比較すると、定員適正化による職員給与や退職者数の減による退職手当の減などはあるものの、一方で、障害者自立支援給付費等の扶助費が約48億円、また、子ども・子育て支援新制度の開始に伴う経費で約25億円、また、介護、そして後期高齢者制度の利用者増などにより約34億円がいずれも増となっている。また、新型コロナウイルス感染症対策としても約34億円増となっている。一方で、来年度から開設する児童相談所、一時保護所の経費についても純増となっている。
 予算については、市民のニーズ、また社会情勢に対応して年々増減をするものであると考えるが、必要な事業にはしっかりと予算を確保するということが必要である。一方で、それらの事業の手法や、また介護予防、健康保持増進等の予防予算等によって経費の増嵩を抑制するということも重要である。
 事業費の増加に対しては、当然、財源が必要となるが、国や県などの財源も積極的に活用し、取組を進めていきたい。
◆内藤智司〈意見・要望〉
   当初予算については、過去、新事業として導入時に国庫予算も組みながら取り組んできたと思う。しかし、その積み上げてきた事業の通年経費の影響は懸念しなければならない。
 その一方で、奈良市は児童相談所、いわゆる子どもセンター事業を開始した。扶助費等については、今後、人口推計からも増大していくことは明らかだ。年度末には、行財政改革も示されると思うが、今までやってきた事業の中で、切るべきものは切る、残すものは残す、そういった決断は今後必要になってくると思うし、公共施設の道筋についても、各論に入っていけば、その地域の方々と大きな議論をしていかなければならない。ここに着手しなければならないということで、そういったところも今後大きな課題になってくると思う。これを過去、FM推進課という専門部署をつくってやってきた。今、財政課の片隅でやっている。片隅という言い方は悪いが、財政課の中の業務としてやっている。
 これを中の業務としてよりも、大きなエネルギーが要るというところを十分市長としても把握して、行財政改革の中でその部署についても改めて検討してほしい。

【2,公共施設の老朽化について】
◆内藤智司 
 本市だけではなく、これは全国的にも大きな課題だ。当然、本市においても、その対策は財政面からも重要な課題である。
 これまでは専門部署を設置して、統廃合の取組をしてきた。一方では、公共施設の老朽化はますます進行し、予断を許さない状況であることも事実だ。総論はもとより、各論を早期に進めなければならない。市長も以前の答弁から、重要という認識であり、計画的な対応が必要と述べられているが、その考え方については?
◎市長(仲川元庸)
 全国的な状況としては、昭和40年代から50年代にかけて集中的に整備された様々な公共施設が、今後一斉に更新期を迎えようとしている。その一方で、人口の減少等により歳入の構造が変化をすることによって、施設を維持していくための財源が十分に確保できないとも見受けられる。
 こういった状況に対応するために、総合的に公共施設の計画的な管理をしていくという考えが重要であると考えており、市民の財産でもある公共施設やインフラなどをどうすれば持続可能な形で次世代に引き継いでいけるのか、現在策定している次期の行財政改革計画の中で、指摘のように具体的な施設も掲げながら、実効性のある計画として策定をしていかなければならない。

【3,県域水道一体化について】
◆内藤智司 
 第2回奈良県広域水道企業団設立準備協議会の中間報告を受けてについて、令和4年2月17日に県域水道一体化の協議会が開催され、その内容について、2月24日に池田管理者から本市議会に対して報告、説明があった。報告の中で池田管理者は、県が作成した財政シミュレーションの検証がいまだできていないと話した。
 当該シミュレーションについては、私も以前から投資水準等の基準が統一されておらず、各市町村間の公平性が保たれていないのではと懸念していた。
 そこで、池田管理者に質問する。
 2月17日に県が示した協議会資料の内容を精緻に検証した結果、奈良市の意見とそぐわない場合はどのように対応する考えか?企業団に参加しないということもあり得るのか?
◎企業局長(池田修) 
 現在、県作成の財政シミュレーション等について、企業局で検証するため必要となる根拠資料を県水道局に求めている。県から出てきた回答を局内でいろいろ検証して、もし奈良市民に対して不利益となる内容であれば、まずは県に計画の修正、変更を働きかけていくことになる。それでもなお奈良市民にとって利益が生じないと判断すれば、企業団参加を見送ることになる。
 市民にとっての利益は何かという重要な問題については、今回中間報告で示されたスケジュールもあり、今後、市民への広報、説明を進めていくほか、有識者のアドバイスを得たり、議員の皆様とも客観的なデータに基づいた議論をする機会をお願いしたい。
◆内藤智司
 市長も以前の発言から、市民が一番であると、メリットがなければ参加しないとも発言をされてきた。
 今回の中間報告で示された中には、基本計画案、基本協定案の作成を11月までに、今回新たに示されたスケジュールは令和5年2月に法定協議会への移行と示されている。
 令和3年1月に水道事業統合の覚書に仲川市長が調印して1年以上協議されている中で、示された今後のスケジュールから、奈良市民にメリットがなければ参加しない、そういったことが、今さら離脱とすることが本当にできるのか?
もう一点、下水道事業の取扱いについても極めて重要な問題だと考えている。市民は上下水道料金をまとめて一緒に払うからだ。
 他市町村では、水道料金を奈良市並みに値下げしている一方で、本市において下水道事業が分離され、非効率になると下水道料金が値上がりしたり、奈良市民にとってはトータルでは実質的な値上がりと感じるのではないか。
 現在、奈良市の下水道使用料は、奈良県下では高いほうと認識している。水道料金が統一されれば、奈良市の上下水道料金は奈良県下の他市町村と比べて高くなる。このことについて、市長はどのように考えているのか?
◎市長(仲川元庸) 
 令和3年1月に水道事業等の統合に関する覚書を締結しているが、その内容については、水道事業等の統合に向けての協議、検討を進めるとなっている。当然、文字どおり協議、検討を進めているという状況なので、市民にとってメリットのある事業でなければ、当然参加をしないという選択肢はあると考えている。
 あくまでも現段階においては、県の事務局から出されたシミュレーションについて様々な角度で検証を加えて、より緻密な将来計画を策定する、そのシミュレーションが奈良市の市民にとって真に利益となるものであるかを慎重に判断する、そういった段階であると考えており、中立的な立場で今の段階としては検討をしているという状況に変わりはない。
 次に、水道料金については比較的安いが、下水道料金については高いほうだと、こういった部分、市民にとっては一体的にお支払いをいただくものなので、上下水道両方合わせての市民負担がどの程度であるのかという議論は、市民の直接の負担感ということを考えれば当然重要な観点である。
 この点については、下水道事業の、県のこれまでの財政問題ということをかつてから議員の皆様からもいただいてきたので、我々としても、下水道問題についても引き続き議論をしていきたいと思うし、水道事業のみで市民にメリットが出ないと、仮にそういったシミュレーションとなれば、ではトータルでメリットを生み出すような方策が考えられるのかどうかというようなことも考える可能性はあるのではないかと考える。
 このあたりは、引き続き関係市町とも議論をぜひとも進めていきたいと思っているし、基本的には、これからの人口減少時代においては、広域化という経営手法は非常に有効なものであるということを大前提で考えている。一方で、その手法を現実に落とし込んだときに、緻密な数字の算定というものが不可欠である。
 消防の広域化を議論した際にも、実は同様の論点が大きく出た。当時は詳細な詰めをせずに統合してしまったということで、その後の消防広域化に大きな課題が残ったということが直近である。そういった過去の経験もあるので、今回の水道事業の県域水道広域化についてはそういったことがないように、事前に考えられる限りの様々な視点で問題点を洗い出して、参加市町全てが納得できるような状況を根気よくつくっていくということが必要であると考えているし、事務局にもその姿勢を求めたい。
◆内藤智司〈意見・要望〉
   県域水道一体化については、本格的な議論が始まったと認識している。しかし、中間報告にも示されたように、今後のスケジュールと内容から、早期に議会全体で議論しなければならないと考える。
 他市においては、11月の基本計画策定から2月の法定協議会設立までの間、十分な議論はできないのではないか、議会への説明、それから市民への説明、これがあまりにも短過ぎるということで、基本計画の前倒しもささやかれている。一刻も早く、データに基づいた科学的な分析を開始しなければならない。
 消防広域化のときに、いろんな議論をしながら市長については英断していただいたと思っている。結果として、奈良市にとって消防行政は、私は守られたと思っている
 今後の協議会、分科会の情報は逐次情報を受け、報告を受け、その内容について奈良市として分析をしていかなければならないと思う。議会全体の対応をしていかなければならないとも考えているので、また大いに、積極的に双方において議論を交わしていきたい。市長の考え方、局長の考え方、本日の答弁を見る限り、市民にとってどうあるべきかということをきちっと答えていただいたと思っているので、そのことを中心に議論を深めていきたい。

【4,地域自治協議会について】
◆内藤智司 
 地域自治協議会は、現在14団体が設立され、活動している。地域によって温度差はあるものの、地域性を発揮されて、多様な取組をされている。しかし、行政との間にはお互いの課題が多くあり、なかなか進んでいない状況でもある。
 そこで、改めて、市長はなぜこの地域自治協議会の設立に取り組んでいるのか?行政として何を期待しているのか?
 また、持続的な活動を支援していく考え方について、現在、14地区で地域自治協議会ある。そのうち11地区が令和4年度で設立4年目を迎える。その中で、市民だよりのポスティングや避難所運営等を担っていただいているところもあるが、設立された地域自治協議会を継続して運営していくための課題としては、運営資金や担い手の確保が必要とされている。そのために、これまで市が行っていた事業の中から、地域でできることがないのかと様々な提案がされていると聞いている。
 地域自治協議会が市に代わって事業を行った場合の委託料等は、地域自治協議会を運営していくための貴重な資金になると思うが、このことについて、市長としての考えは?
◎市長(仲川元庸)
   やはり自治会の加入率の低下、また様々な地域の担い手不足などによって、地域コミュニティーが弱体化をしているという問題がある。
 これらをしっかりと再構築して、場合によっては新たな担い手をしっかりと巻き込んで、行政だけでは手が届かない様々な地域課題に解決の糸口を見いだしていく、そして、その地域課題の解決を担う取組を持続的に行っていけるようにしっかりとサポートをしていくことが必要であると考えている。
 その中で、地域の自治連合会や自主防災・防犯組織、また、民生・児童委員協議会、地区社会福祉協議会など、これまで地域の中核となった活動を担っていただいた各種団体の方々をプラットフォーム化して、新しい連携や協働の仕組みづくりを進めていく必要がある。
 市としては、この地域自治協議会の取組が今後の奈良市の地域活動の要になるものと位置づけており、その設立を引き続き推進していきたい。
 次に、今後の地域の自主財源の確保については、地域自治協議会のほうからは、地域課題解決に向けた様々な提案を日常的に頂戴している。その取組に対しては、庁内でそれぞれの所管課を巻き込んで、検討を随時行っている。
 一方で、市のほうからも事業提案をしている。これまでは市が直接事業を担っていたようなものについても、例えば住民サービスの向上の観点、また、地域での自主的な取組を進めることによる地域力の向上などの観点からも、積極的に地域に様々な業務を移管していくことが重要であると考えている。
 そういった取組を進めていくことが、ひいては地域自治協議会の自立にもつながっていくと考えており、地域で事業を実施していただく際には、市がこれまで民間の事業者等に支払っていた際の金額を基に、様々な考慮すべき要素を反映させながら、適切な金額を査定していく必要があると考えている。
 一方で、市としては、この地域自治協議会の仕組みを将来にわたって持続可能な形で維持していく必要があると考えており、来年度においては、いわゆる設立から4年目以降の交付金についても支援を継続していく必要があると認識し、予算を計上している。
 あわせて、地域づくりコーディネーターによる助言や情報の提供、また関係課との橋渡しなど、市としても地域課題解決の中心となる地域自治協議会を支援するための取組をさらに継続し、力を入れていきたい。

◆内藤智司〈意見・要望〉
   私も地域でその地域自治協議会に携わっている一人として、担い手、それから自治会の参加者をどう増やしていくか、担い手をどうつくっていくか、いろんな試行錯誤をしている。
 その上で、一旦立ち上げた事業を継続的に持続していこうと思えば、経費、いわゆる財源を持っていかなければならないと思う。我々は市から示されてくるメニューの中で、これなら地域でできるなということを行っていきたい。そのためにも制度をつくるのは行政しかできないので、これから、いろんな地域から提案されるところについて検討を深めていただきたい。
 それを今、地域づくり推進課が中心になってやっていると思うが、なかなか縦割りのハードルというのは越えられない現状の中で、進んでないように思う。環境部の事業に関しても、地域と一緒になって、こういうやり方をすれば担っていけるかも、ところを、制度を組み立てるまでに、地域とコミュニケーションしながら役割分担を、もし決めていけるのなら、その地域ではこういったこともできるのではと相談できるのではないかと思うので、柔軟な対応で制度を構築していただきたい。
 我々は、3年目、4年目に入ったときに自分たちで自主運営できる、そこを目指していきたいと思っているので、そうでなければいつまでも資金を出して持続していくということは、行政としてもないかと思う。そういったところを今後本格的に検討してほしい。

【5,新クリーンセンターの建設について】
◆内藤智司 
 令和4年度当初予算案の主要な施策として、クリーンセンター建設推進のための予算として、まちづくり拠点整備基本構想策定、施設整備基本計画策定等、アクセス道路整備検討等を実施するための予算として約9500万円計上されており、これは現候補地である七条地区で事業を進めていくためのものとなっている。
 新クリーンセンター建設には10年程度の期間を要するため、現環境清美工場の老朽化の実情を考えたときに、果たしてこれから10年もたせることができるのか疑問を感じるところであり、ごみ処理施設は迷惑施設というものの市民生活には必要不可欠なものであり、新クリーンセンター建設は一日も早く実現するべきものと考える。
 新クリーンセンターは、これまでのいわゆる迷惑施設でなく、ごみ焼却により発生したエネルギーを活用し、地域に新たな価値を創出し、ひいては脱炭素社会実現に貢献することができる未来志向型のまちづくりの一翼を担う施設として整備を行っていくことが必要であると考える。
 そこで、現候補地である七条地区で建設することに対する市長の方針は?
◎市長(仲川元庸)
 候補地の選定においては、人口重心、また土地の現況、また主要な道路等のアクセスのよさなどを中心にこれまで選定してきたが、この七条地区については、近隣に今後、JR新駅や仮称奈良インターチェンジを含む様々な交通結節の中心拠点が設置されるということ、また、幹線道路からのアクセスが取りやすい点など、様々な観点から適地であると認識している。
 一方で、現環境清美工場の老朽化が大変顕著であるということからも、一日も早いクリーンセンターの建設がさらに必要性を増していると認識している。
 新しいクリーンセンターについては、新しい技術を用いた余熱利用による発電や温水の利活用など、いわゆるエネルギーの回収拠点としての側面が大変重要になってくる。
 また、災害時にも地域住民の皆様の命を守る防災拠点として機能を大きく発揮することができると考えており、従来のようないわゆる迷惑施設という認識ではなくて、持続可能な社会をつくっていくための重要な拠点であると、そういった考え方をしっかりと掲げて、地域に新たな可能性と価値を生み出す、まちづくりの拠点となるような施設を目指したい。
◆内藤智司〈意見・要望〉
 最近、各地で新設、運転されているクリーンセンター、これまでの嫌悪施設のイメージはほとんどない。まちのシンボルとして観光場所となっているところ、資源エネルギーを持つことで、地域の持続可能都市としての発展につながっているところもある。
 ごみを集めてくる施設ではなく、資源エネルギーの燃料を地元から調達できるという、まさに地産地消、持続可能な未来都市としての設備であることを奈良市民に、地元地域の方々に知ってもらうことが最も大事かつ大切なことだと思う。
 未来への希望のある新駅周辺で、新クリーンセンターの建設とほぼ同じ時間軸で、未来都市を念頭に置いた新しいまちづくりが展開されていることからも、このあたりは、部は違えども縦割りを打破して情報共有しながら、国が目指して掲げる2050年カーボンニュートラルに向けた、奈良市一丸となった本気での取組を行っていただきたい。
 私は先ほど、七条においての思いは?尋ねたが、私は別に七条にこだわっているわけではなく、そこで賛成や反対という立場でもなく、現有施設を見た限りは、皆一致して、一刻も早く建てなければならないということが第一義だと思っている。
 1ミリも進まないのであれば、インターチェンジ、JR新駅のまちづくりとともに考えていくといった構想も私はあるのかなと思うので、何が選択肢なのか、もっと広い視野で見ることも必要だと思う。
 その手がかりとして、まずはクリーンセンター建設推進課という課の名前を変えられてみてはどうかと思っている。例えば「未来まちづくり推進課」、「住みよいまちづくり推進課」など、以前の工場の負のイメージを払拭して、多くの市民の方々に理解してもらえることなどもしてはどうかと思う。
 いずれにしろ、工場の建設は奈良市として何よりも進めていかなければならない事業だと繰り返し思う。いろんな発想で、あらゆる手法で、ぜひ一刻も早く進めていただきたい。

【6,環境事業の今後の計画について】
◆内藤智司 
 家庭系ごみと再生資源収集運搬業務の民間委託化の進捗、並びに今後の環境清美工場の管理運営を含めた環境事業について、現工場においては、プラントの老朽化が著しく、大規模な改修が必要とされ、同時に、運転管理においても専門性を要することから、包括業務委託が進められていると聞いている。また、家庭系ごみと再生資源の収集においても民間委託化の計画が進められていると思うが、環境事業の今後の計画については?
◎市長(仲川元庸)
   環境部においては、職員の高齢化、また職員数の減少などへの対応が現在あるが、一方で、市民サービスを低下させることなく、かつ行政コストを削減するという、非常に難しい運用が求められていると考えている。
 そのような中において、市としては、これまでもごみ関連業務の全体最適化計画ということで、特に収集部門の民間委託を進めてきた。
 まず、家庭系ごみの収集運搬業務については、平成25年度から市街地区域の家庭系ごみ収集運搬業務の民間委託化を進めている。令和3年度においては、直営の2トンパッカー車は過去最大で五十数台あったが、これが20台まで縮減している。民間委託率を世帯ベースで見ると67%に達している。さらに、令和4年度当初には、当初の目標だった民間委託率70%が実現する見込みだ。
 一方、当該業務の委託先である奈良市清美公社から、さらに純粋民間への業務委託へ移行をしているところで、市の直営、そして清美公社、そして純粋民間と、それぞれが市街地全体を三等分するような形で収集エリアの再編が進んでおり、3事業者がそれぞれに収集運搬業務の効率性や、またきめ細やかなサービスを展開することで、市民サービスの向上に寄与できるものと考えている。
 次に、瓶、缶、ペットボトル等の再生資源の収集運搬についても令和2年度より民間委託化を進めており、令和4年度当初には70%に到達する見込みだ。さらに、令和5年度当初には100%の民間委託を実現する計画を進めている。
 再生資源については、いわゆる民間の事業者の方のみならず、地域自治協議会をはじめとした地域の方々に事業を担っていただき、一定の費用をお支払いするというようなことも一つの方策として考えている。
 これらはより経費を抑えてコンパクトに事業を行うということと併せて、地域の中でルールや方法をそれぞれ考えていただく、より住民密着のサービスとしてきめ細やかな対応ができるということにもつながると考えている。
 一方で、現在の環境清美工場の施設の老朽化については著しいものがあり、昨年の夏に起きた突発的な事故が今後起こらないように、引き続き細心の注意を払って整備を図り、厳しい管理運営を行う必要がある。
 具体的には、現在の工場設備の修繕業務と、そして職員による運転管理業務を一体化させることで、より効率的かつ安定的な工場の稼働を目指していきたいと考えており、それらを実現するための包括的な民間委託について、現在、その準備作業を進めている。
 環境部の業務については、これまでも様々な業務の改善を重ねてきたが、ここ数年は業務のアウトソーシングにより全体最適化を進めているところであり、これらについては一定のゴールが見えてきたと考えている。市としては、今後も引き続き市民の皆様に信頼されるサービスを実現していきたい。
◆内藤智司〈意見・要望〉
   市長は環境部の改革の旗印の下、5年ほど前に10月で幹部職員を刷新する異例な人事異動を敢行した。当時、相当な波紋と、庁舎内で体制に大きな影響が出たことは私の記憶に残っている。そして、今日まで多くの課題、ハードルを一つずつ、地道に現場と交渉され、今後のスケジュールを示されたことは、部長をはじめ環境部改革に携わっていただいた方々、そして交渉に向き合っていただいた現場職員の皆さんには本当に敬意を表したい。
 とはいえ、計画実行にはまだまだ多くの課題があると思う。現場、職員組合等、関係箇所との協議を、交渉を今後とも丁寧に行っていただき、進めていただきますよう要望しておく。

【7,奈良市総合防災訓練の意義について】
◆内藤智司 
 昨年9月5日に予定していた令和3年度奈良市総合防災訓練は、コロナ禍のため残念ながら中止となったが、昨年5月の総務委員会において「、総合防災訓練の準備を中断してコロナ対策に集中すべきではないか?」と質問したところ、危機管理監からは、「結果的に中止となることなども考えられるが、訓練の計画、準備を進めていくことに大きな意義があり、訓練の成果の半分は準備段階にあると認識している」との答弁があった。令和4年度においても、10月30日に奈良市総合防災訓練を計画していると聞いている。
 そこで、訓練の準備段階を含めた市の総合防災訓練の意義は?
◎市長(仲川元庸)
   令和3年度においては、年度当初から関係機関との調整会議、また様々な準備訓練などを行いながら総合防災訓練の準備を進めてきたが、コロナの感染急拡大を受けて、昨年8月4日のコロナ対策本部会議で中止を決定せざるを得なかった。
 市の総合防災訓練については、市民の防災、また減災意識の高揚、関係機関との連携の強化、そして、市の職員の災害対応力の向上などを目指しているが、これは訓練当日のみならず、その準備行為も含めて力量が身につくものであると考えている。
 そういった意味においては、その実施の前の年度から災害を分析、また研究をしながら訓練を企画する、そして、自主防災・防犯組織をはじめとする様々な関係団体との調整会議、そして意見交換を繰り返す、さらには、避難所配置職員などに対する教育を施す、そして職員の安否確認や災害対策本部の具体的な活動などをシミュレーションしながら準備訓練を行っていくという、様々な本番に向けての準備行為がある。
 これら全ての工程において、相互の理解と顔の見える関係の構築というものが図れるので、これが何よりも大きな資源であると考える。
 市や関係機関などにおいては定期的に人事異動があるが、このサイクルで市としての防災力を高めていくことが、総合防災訓練を中心とした防災訓練の大きな意義であると認識している。
 令和4年度においても、10月30日の実施を目指して準備を進めていきたいと考えており、その準備行為の中から防災力の向上につなげていきたい。
◆内藤智司〈意見・要望〉
   私は、去年実行するための準備をして中止されたこと、少し反対に感じていたが、総合計画検討特別委員会のとき、それから本日の質問の危機管理監との話の中で、これは毎年繰り返し行うということを理解できて、それがこの総合防災訓練の一番の大切なところだ。
 人事異動があって、そのたびにその人にマニュアルを頭に入れていただいて、それを体で動かす。体で動かさないと本番では絶対に動かない。これは私、過去にインフラの一翼を担う会社に勤めていたときに、事故訓練、災害訓練、本当に毎年毎年、年2回、3回とやってきた中で、体で覚えて事故対応をしていく。このことが本当に大切だと思っているので、今回の総合防災訓練の取組については、本当に今後、継続してほしい。
 また、前の総合計画検討特別委員会のときに危機管理監が話していた、未来の10年、20年先の担い手、子供たちにどういう教育をしていくのかも大切だという話だった
 今回、質問はしなかったが、自然災害に対する学校防災体制の強化及び実践的な防災教育の推進について、これは文科省のほうから令和元年に示されている。こういった中では、学校保健安全法に基づく取組、それから家庭、地域、関係機関との連携、協働について、こういったことがうたわれている。今後、児童・生徒やこういった方々へのいわゆる防災教育、防災研修といったものにも取り組んでいく必要があると思う。

【8,観光行政について】
◆内藤智司 
 奈良市観光事業の将来ビジョンについて、奈良市の基幹産業はと言えば、口をそろえて観光産業と返ってくる。基幹産業としての観光戦略の強化をどのように考えるのか?
これまで進めてきた観光振興、プロモーションと今後のリカバリー計画は?
おもてなしのまちづくりとして、観光地域としての地域の基盤づくり、原点回帰、国内ツーリズムに対する奈良市としての戦略は?
 新たな価値観が生まれた2年余りの新型コロナウイルス感染症との闘いで、今後はバーチャル観光等、サステーナブルなツーリズムのSDGsへの視点も必要となるが、基幹産業でもある奈良市観光事業の将来ビジョンについて、アフターコロナの出口戦略とする考えは?
◎市長(仲川元庸)
 本市の将来ビジョンについては、本市の基幹産業が観光であるということは言わずもがなだが、これまでのように国内外に向けた積極的な誘客ということが難しい状況が引き続いている。
 一方で、そういった状況をマイナス面だけで捉えるのではなくて、これからの新しい観光の姿を目指していく一つのきっかけにしていくという発想も重要である。
 特に、非接触型の観光案内所の運営、また、町なかの混雑状況の可視化などについては、コロナへの対応ということにもつながる一方で、例えば様々な観光案内所の管理運営経費の削減であったり、混雑状況の可視化というものは、コロナの密を避けるということもあるが、奈良に滞在されているお客様のよりスムーズな移動ということにもつながるので、コロナ以外にも大きなメリットがあると思っている。
 また、小規模で近場を観光する、いわゆるマイクロツーリズムの推進、さらにはオンラインを活用したツアーの実施、また、民間事業者による主体的なコンテンツ造成を支援していくなど、様々な取組にこの間チャレンジしている。
 これまでは地域の人との交流、また日常生活を見たり触れたりするということが旅の大きな目的になっていたが、この点をコロナの中でどのように実現していくかという具体的な方策を考えていかなければならない。
 折しも世界情勢が緊迫をしている中において、国家同士ではなくて国民同士が相互に尊重し合い、互いの文化の違いをよさとして理解し合うという意味において、観光産業は平和産業であると思っている。そういった視点で、奈良でしかできないこと、奈良ならではの取組が多様に考えられるのではないかと思っており、奈良観光のいわゆる質的な転換を戦略的に図っていくことが重要である。
 まず、この先のスケジュールとしては、2025年に予定をされている大阪・関西万博が大きなチャンスになろうと考えている。世界から多くのお客様にお越しをいただくこの機会に、奈良の歴史的な価値、そして、その歴史をバックボーンとした、将来にわたっての奈良の魅力や価値をしっかりとお伝えできるように、持続可能性のある観光というものを実現していきたい。