奈良市 令和4年3月 予算決算委員会 03月22日

【1,保育士の配置の要件緩和についての条例改正】
【2,新型コロナ対策関連予算について】
【3,市長専決処分の報告及び承認を求めることについて】
【4,新クリーンセンターの建設について】


【1,保育士の配置の要件緩和についての条例改正】
◆内藤智司
 国は、待機児童を解消し、受皿拡大が一段落するまでの緊急的、時限的な対応として、平成28年4月より、各自治体が保育所における、利用する児童が少数である早朝、夜間の時間帯に限り、保育士最低2人を配置するところ、1人は資格を持たない者でもよいとする保育士配置の特例を実施できるように条例改正を行ってきた。
 今回、本市が条例改正を提案するまでの間、6年のタイムラグがあるが、その理由については?
◎仲川元庸市長 
   本市もこの特例があるということについては認識しているが、それよりも保育士確保にまずは注力すべきであると考え、様々な施策を講じてきた。職員給与改善事業、また保育士就労奨励費交付事業、また保育士宿舎借り上げ支援事業などにより、保育士の処遇改善や働きやすい環境を整えることで、保育士の確保及び離職の防止を図ろうとした。
 また、奈良市保育士試験における資格取得支援事業を実施することで、新たに保育士を目指そうという方々を掘り起こすということにも取り組んできた。
 一方で、慢性的に保育士不足が解消されない状況が続いていること、また、このたび奈良市私立保育園長会からも本市における特例の導入についての要望いただいたことなどを総合的に勘案して、今回の条例改正をしようと判断した。
◆内藤智司
 現在も資格を持たない保育補助の方が働いている。これは昼間に多くの保育士さんが勤務されている中でされているが、朝夕になれば2人に1人と責任がかかってくる。このことから、保育は誰でもできるというわけでなく、国家試験が必要な専門性の高い仕事だ。緊急的なやむを得ない措置であることは理解するが、保育士配置の要件緩和で安全な保育が担保されるのか、この点が一番気がかりだ。市長の考えは?
◎仲川元庸市長 
   指摘の点は大変重要だと考えている。今回、特例における保育士と同等の知識及び経験を有すると認める者として、研修の受講実績、また、保育所等で保育業務に従事した時間が十分である者という条件をつけることで、一定の水準を維持しようとしている。
 本特例の導入に当たり、園に任せきりにするということではなく、事前に特例の適用が可能な施設であるかどうかを市が責任を持って確認を行い、導入後においても特例が適正に運用されているかどうか指導監督を徹底するなど、市がしっかりと責任を持って関与していく必要が不可欠である。
◆内藤智司〈意見・要望〉
 今回の条例で緩和をされるところは民間での要請があったというところからだとも聞いているし、奈良市の市立については適用しないということも担当課からは聞いている。そういった意味でも、誰でもできる仕事ではないという、安全を確保する、安心を確保する、このことを十分に保護者含めて市民に理解していただけるような形でやってほしいと思うので、この点についても要望しておきたい。

【2,新型コロナ対策関連予算について】
◆内藤智司 
   デジタル化・非接触社会への対応が重きに置かれた4つの柱で示されている。
 令和3年度においても、新型コロナ対策関連予算については同様に4つのテーマで説明されていたが、令和4年度についてはデジタル化・非接触社会への対応というテーマの予算が大きく増えている。その中で共通基盤地図の更新と道路台帳図をデジタル化するための予算3億5000万円が計上され、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用したものとなっている。
 本会議の答弁等における市からの説明では、これまでアナログデータであったものを今回デジタルデータ化すると説明があったが、どうして今、当該事業を予算化する必要があったのか。道路台帳図の予算のみでも2億5000万円もかかるようだ。なぜここまでの予算がかかるのか説明を求めたい。
 また、これが完成した場合にどれぐらいのランニングコストが概算でかかるのか?
◎仲川元庸市長 
   コロナ対策予算の使途については、目の前の対策に予算を一定投じるということと併せて、アフターコロナを見据えた社会の進展に資する事業、いわゆるアフターコロナ対策ということも重要であると考える。本市においても、いわゆる行政のDX化ということにはこれまでも力を入れてきた。
 今回のこの予算については、奈良市道が約1,700キロメーターあるが、これをデジタル化するということに伴い、空中写真測量、それから地形図の数値図化及び現地調査などを行う予定だ。これらにより、道路台帳をデジタル化することが可能となり、道路の占有許可申請業務等のオンライン申請が可能となる。
 また、道路に関する補修履歴等の様々な情報をデジタル上で合わせることができるので、効果的な道路管理業務が可能となると考えている。
 導入後については、従来であれば毎年約3000万円の予算が新規路線の追加や廃止にかかっていたが、業務の負荷は変わらないが、紙ベースの台帳をなくすことにより、コストの大幅な縮減が図れると考える。
 また、デジタル台帳を市のホームページにも公開することにより、市民や事業者の方々が来庁することなく閲覧ができるという市民サービスの向上にもつながり、窓口の対応の負荷も低減するものと考えている。
 これらはコロナ後の社会を見据えた奈良市の取組としては、重要なものである。
◆内藤智司〈意見・要望〉
 この予算に対して、いろいろ分科会の後、担当課とも話を聞く中で、アナログデータをデジタル化することによって、負荷が軽くなっていく。そしてそれを庁内のGISに組み込むことによって、各関係担当課との業務のやり取りもスムーズになる。今、市長が言われたようなアフターコロナにおいては、十分な利用価値というか、効果はあると一定思うが、どうしてもコロナ対策予算というところで、密を避けるとかそういったところが答弁の中では前面化していたので、そのために3億5000万円かえるのかと思うが、今後、このシステムによって庁内がより効率化されていくことを期待したいと思うし、ランニングコスト自身も、今回、過去5年間の新規予算措置の必要経費を資料要求した。
 これを見ると、令和4年度の一般会計当初予算に事業費として約17億5000万円の予算が累計して計上されている。財源はそれぞれあるが、今回、道路台帳図のデジタル化は導入予算で、コロナ臨時交付金を活用されるということで一般財源からの負担はかかっていない状況だが、毎年新たなランニングコストが生じることは非常に気になるところだ。これだけではなく、今後、新規予算を措置されるときは、その後にどういった必要な経費につながるか、この辺はしっかりと検証していただくことを要望する。
 こうした新規予算後の負担額については、これからも注視したいと思う。これから先、財政の健全化、また行革の大綱も出てくるだろうと思うが、公債の償還もまた増えてくるという中で、こういう累積した予算も経費もやはり大きなウエートを占めてくると私は思う。

【3,市長専決処分の報告及び承認を求めることについて】
◆内藤智司
 これは新斎苑の用地取得に当たっての住民訴訟で、鑑定価格を超えた売買契約金額について、その差額を市長個人及び元地権者に対して、3人連帯して市に返還するよう市は求めよという判決が確定した。そこで、市は3人に請求したが期日までに返済されず、現在、市はいわゆる債務者3人に対して損害賠償請求訴訟を提起している。
 この訴訟と並行して、市は元地権者の方に対してだけその資産の保全を進めてきた。この資産保全に当たって必要であった供託金を市長専決処分されたわけだが、現在3人に対して提起されている訴訟には、どのようなケースの判決があるのか?
◎向井政彦副市長 
 一般的に民事訴訟については、4つぐらい想定されると聞いている。
 まず1つ目、原告、この場合は奈良市側のことだが、原告の請求の全部認容、これは請求内容が全て認められるという場合。
 2番目に、原告の請求の一部認容、一部棄却がある。この場合は、請求内容の一部が認められるという場合。
 3つ目として、原告の請求の全部棄却、これは請求内容が全て認められないという場合。
 さらに4つ目として、裁判所の判断での和解が勧告される場合。
◆内藤智司
 では、市が勝訴した場合、また、仮に裁判所から和解が勧告された場合、市ではどのような手続が必要になるか?
◎向井政彦副市長 
 まず、勝訴した場合は、判決が確定する、または控訴、上告等で判決の確定が遅れた場合に財産上の請求が認められるという仮執行宣言が付されたとき、そのような場合は債務名義を取得することとなり、債務者の資産の差押えなど強制力を持った債権回収が可能となる。
 これを前提に債務者の方々と損害賠償金の弁済に向けた協議を行うことになる。その際、協議が調わず返済が行われない場合、強制執行の手続を取るということになると考える。
 次に、和解については、裁判所からの和解案が出されれば、それを受け入れるかどうかの判断が必要となる。この和解案を市が受け入れる場合、議会の議決が必要となる。議会の議決をもって和解は成立して、その場合、和解に沿って損害賠償金を回収することになる。
◆内藤智司
   では、今、債務名義の取得という答弁があったが、債務名義を取得した場合、具体的にはどのような行為を行えるのか?
◎向井政彦副市長 
   債務名義は強制執行の申立てに必要となる権利の存在及び内容を公証「公に証明する文書」なので、債務名義を取得することにより、任意の弁済がなされない場合に強制的に債権回収を図ることができるようになる。
 具体的には、債務者が所有している動産や不動産の差押えや競売等による売却、預貯金の口座の差押え、また、給与所得者であれば給与の差押えによる回収などが可能になる。
 また、差押えをし得る財産の追加調査、これは裁判所での財産開示手続や弁護士会を通じた照会などが、これも実施可能と聞いている。
◆内藤智司
   今までの質疑を踏まえて聞くが、今回、市は元地権者の方の資産を仮差押えしている。この仮差押えされた資産の内容や金額については?
◎向井政彦副市長 
   今回、仮差押えした内容等は、元地権者の方々が所有されている不動産(土地建物)及び市が新斎苑の用地取得に当たり、この2人に売買代金を振り込んだ金融機関の口座などについて、総額1億3773万9118円(これは当初納付期限である昨年12月6日時点での元金、遅延損害金の合計金額)、この全額の回収まで可能となるように、当該資産の保全を申し立てたもの。
 実際に仮差押えできた資産の内容、金額は、個人情報のため答えられない。
◆内藤智司
 今、元地権者から全額の回収を図るような答弁があったと思うが、市長個人からの回収はどのように考えているのか?
◎向井政彦副市長 
   今回の債務は、昨年度もちょっと議論になったが、不真正連帯債務であるので、今回の仮差押えは債権の全額を元地権者の方々から回収し、市長からは回収しないと、そういったことを目的としたものではない。あくまで元地権者の方々から現時点においても任意の弁済の意思表示がなされていない状況において、今後の市の元地権者の方々からの債権回収を担保するための手続として資産の保全を図ったものだ。
 また、このことは、今後必ず強制執行により債権回収をすることになるというものではない。現在、訴訟を提起しているが、今後、現実的な弁済計画が元地権者の方々から示されるなど弁済の意思が確認できれば(実際に任意の弁済がされればもちろん一番いいが)、そういうことになれば強制執行という手続は不要になるものと考える。
 一方、市長個人については、その訴訟は代表監査委員の権限で遂行されている。そのことから、資産保全についても私から答えることは控えたいと思う。
◆内藤智司
   では、今、訴訟は代表監査委員の権限という答弁だったが、代表監査委員に聞くが、市長個人に対する資産保全手続を取らない理由は?
◎東口喜代一監査委員 
 市長個人の資産は公開されている。給与も市が支給している状態だ。市長個人も損害賠償金の支払いに応じる意思表示をされている。その意思表示を、マスコミを通じてしていることに対して、具体的に昨年度末の期末手当も全額市に入金があった。市が預かっている。
 このような状況を踏まえ、訴訟の代理人である弁護士と相談して、現段階にあってはあえて資産保全の手続を実施する逼迫性にはないと判断している。
◆内藤智司〈意見・要望〉
 専決処分の理由等をそのまま受け入れると、「片一方だけ差押えして市長は差押えしないのか?」という声も、少なからずあるのは事実だ。その辺、今後、今、代表監査委員が言われたように、その負担に対しては公平性が担保されていると解釈をしておきたい。

【4,新クリーンセンターの建設について】
◆内藤智司
 今回の予算では建設地を七条地区に限定するが、奈良モデルの広域化が前提で進められると理解していいのか?
もともと七条地区での建設候補地は、広域化として奈良県との連携をしながら進めてきたもので、もし単独で建設となれば、今回の予算はどのように判断すればいいのか?
◎仲川元庸市長 
   令和12年度からの稼働を確実なものにするべきと考え、今回の予算については提案した。
 斑鳩町については、これまでも引き続き広域化をやっていこうということを双方で確認している。大和郡山市については、これまでどおりだ。
 我々としては、昨年の環境清美工場の事故、不具合もあったので、これ以上、1年たりとも計画を遅らすわけにはいかないと考えている。そういった中では、広域化を図るということについては国としても必要な方向性として示されているので、広域化のメリットが最大限生まれるように、引き続き様々な方法を検討していくことは当然だが、大和郡山市との関係については、どのような形で連携ができるのかを引き続き探っていくという考え方を持っている。
 そういった中では、現在計上し、提案している予算については、この事業を遅滞なく進めていく上で大変重要なものであると認識している。
◆内藤智司〈意見・要望〉
 今回のこの「9500万円の予算」というのは、七条地区で建設を確定するという意味合いがあろうかと思っている。このことに関しては、昨年の当初予算の中でもアセス予算が入っていたと思うが、3年度中に大和郡山市等の広域化の枠組みを決定するとあったが、これまでの中ではまだ枠組みというのは決定されていないということだと思う。
 私はどうしても新斎苑のことを思い出さずにはいられない。当時、これは平成28年3月、新斎苑をあの場所に決定する位置づけの予算が出された。このことに対して当時の議会も相当もめて、一旦否決をされて、市長は再議をしてまでもこれを決めたいということで、それも否決された。私もその中の一員であったこと、そしてその後、担当課では新斎苑に係る事務費、コピー1枚できないような事態になったことを、すごく鮮明に覚えているが、今回もそういった意味では、この9500万円というのは非常に我々としても重たい予算だと思っている。
 新斎苑、本当に喜んでおられる市民の方はたくさんいる。その反面、後味の悪い結果と私も思っているが、それを再び起こさないためにも、市長の今回のクリーンセンター建設に当たっては、それなりの順序をきちっと踏まえて、令和12年運開に向けて最短の距離は何なのか、これからも含めて検討していただきたいと、強く要望しておく。