奈良市  令和6年3月 定例会  03月05日-02号

1.令和6年度当初予算について
2.新クリーンセンター建設について
3.奈良市八条・大安寺周辺地区まちづくりについて
4.市役所の組織体制と機能について
5.女性活躍を目指した管理職登用の評価について
6.子どもセンターの現状と今後の課題について

1.令和6年度当初予算について
◆内藤智司 
 地方債発行に伴う将来の負担増について、今回から、3月定例会の運用において新年度当初予算に係る予算説明会が開催され、各理事者より歳出予算説明調書を基に予算計上の詳細の説明があった。予算審議を行う3月定例会は、特に準備に忙しくされている中での日程に、例年にない御負担をおかけしたのではと思っている。より慎重に審議を尽くしていくことを心した次第だ。

 その中で、特に老朽化に伴う公共施設の改修事業が例年より多く計上されているのではないかと感じた。先日の開会日の市長の提案説明や主要な施策項目に上がっていたように、その一例として、建設後25年以上が経過している西部生涯スポーツセンターの改修事業も、老朽化に伴う天窓の修繕や空調設備の改修等の費用として約2億円もの額が計上されている。
 1点目に、これらの改修費用を含めた投資的経費全体で、昨年度の予算計上時と比較し、事業費とその財源となっている市債の額がどの程度増額になったのか。
 2点目として、市債の発行額が増額となっているが、9月定例会でも少し触れたが環境清美工場における大規模改修費に伴う約140億円の債務負担行為の設定や新斎苑建設、本庁舎耐震工事、子どもセンター建設等に伴う市債償還を考えた場合、加えて、これから迎え得る学校施設等の長寿命化対策等さらなる市債発行が想定され、今後、公債費として財務負担となり、市民サービスの低下など市民に直接影響が出ないか心配であるが、どのように対応するのか?

◎市長(仲川元庸) 
 投資的経費については、例年どおり事業の必要性、緊急性を考慮し、厳しく精査に努めたところ、令和6年度については特にまちの強靱化、防災力の向上などといった災害対策として、緊急輸送道路としての鶴舞橋の耐震補強や、生駒市と共同運用している消防指令センターのシステム改修、また、建物の劣化を起因とした利用者への被害を防ぐための西部生涯スポーツセンター温水プール改修等に必要な予算措置をした。

 これらにより、投資的経費は一般会計で昨年度より約35億円増となり176億7180万7000円を計上し、財源の一部となる市債については昨年度に比して約18億円増え、135億8750万円となっている。

 市債の償還が市民生活に影響を与えないかという指摘については、議員御指摘のとおり、現在多くの大型事業が控えており、市債残高が一時的に増加すれば後年度の財政運営を圧迫することにつながることから、その減少に取り組んでいかなければならないと認識している。

 市債の発行については、これまでも発行抑制に努めるとともに、後年度の償還においては有利な交付税措置のある市債の活用を積極的に行っている。また今後、なら100年会館など過去の大型の建設事業などに係る市債の償還が段階的に終了してくるほか、環境清美工場の大規模改修については、今回の大規模改修の完了後には維持管理コストも減少する見込みであり、中長期的な視点を持って実施している。

 市債の発行により今後見込まれる公債費の増加についても、年度ごとに将来負担をしっかりと見定めた上で、歳入の新たな確保など行財政改革のさらなる推進によって、市民サービスに支障を来さないよう安定的な財政運営を心がけたい

◆内藤智司 
 振り返ると、予算決算委員会の分科会ごとに丁寧に御説明をいただいた。これを受け、我々としても慎重にこの後、委員会で審査していく。

 なお、将来の負担となる市債について、不安を感じないわけにはいかない。現焼却場の大規模改修のため、区域外処理費用を含め、約180億円に近い市債を背負った。最短10年後、新クリーンセンターが稼働すれば、市債残高は一括返済しなければならないことも鑑み、毎年この大規模改修の市債に対して10億円もの償還を課せられることになる。

 今回提案された市債を積み上げた次年度予算を審査するに当たり、これまでなかなか示されてこなかった令和6年度から向こう10年間の財政フレームを示していただくことが必要ではないかと考える。

2.新クリーンセンター建設について
◆内藤智司 
 施設整備基本計画案が概要版として提案された。炉数を2炉とすることとされており、その決定根拠の一つとして近隣自治体等との緊急時の相互支援を示されている。オーバーホールなど点検の際、この相互支援体制を前提に2炉としたものなのか?

 新クリーンセンター事業概要書について、電力の一部を近隣住民に供給するとされ、先日の会見でも400戸程度想定していると発表されていたが、どのような仕組みで供給し、その仕組みは法律上問題ないのか?また、そのような施策に税金を投入することに対し、他の市民から納得が得られるのか?

◎市長(仲川元庸) 
 焼却炉の体制については、本市と同規模の自治体においては2炉または3炉で建設されている。一般的に炉の数が多いほうが、年間の操炉計画の調整がしやすいなど安定稼働においては有利な面もある。一方で、2炉においても実稼働率を積算する中で、365日のうち75日間については年間停止日数と数えており、これらの中には整備補修期間、補修点検、全停止の期間、故障の修理、また、やむを得ない一時休止などを合わせて75日を見込んでいる。

 適切な量のピットを設置するということによっても、定期的な炉のオーバーホールなどで1炉が停止しても焼却処理には全く支障がなく、整備費用やメンテナンス費用といったコスト面では逆に安価であるという利点がある。

 また現在、本市と同規模の他市の事例でも、最近では2炉構成、例えば令和7年5月稼働予定の山辺・県北西部広域環境衛生組合、これは天理市さんを中心にほか9市町村で取り組まれるものだが、142トンの炉を2基で284トンということで計画されている。

 同規模でも2炉を採用されるところが多いということ、また経済性、熱効率といった点も考慮すると、現時点では2炉が適正ではないかと判断した。

 次に、電力の無償供給について、どのようなスキームかというと、新クリーンセンターで発電した電力を小売電力事業者に売電を行い、小売電力事業者が対象世帯と電力供給契約を結ぶことで電力供給を行うことを考えている。

 廃棄物処理及び清掃に関する法律第9条の4においては、一般廃棄物処理施設の設置者は、「当該一般廃棄物処理施設に係る周辺地域の生活環境の保全及び増進に配慮するものとする。」ということで、周辺地域へ一定の配慮を促す規定があり、また、地方自治法第232条の2においても「普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。」となっている。そのことから、公益上必要であれば寄附または補助ができるという部分を踏まえて、近隣住居への電力無償供給については実施可能な施策であると考えている。

 一方で、最新のクリーンセンターについては、決して地域に特別な負担をかけるような施設にはなっていない時代だが、これまでの負のイメージもある中で、候補地の選定に関して、公募で受け入れてもよいと手を挙げていただける地域がなかったことからも、新斎苑事業などとも同様、そういった施設を受け入れていただく地域に対しては、一定の地域振興のための事業や他の要望についても優先順位を上げて実施することに対しては、それ以外の地域にお住まいの市民の皆様からも一定の御理解がいただけるものと認識している。

 今後、全ての市民の皆様に対して、様々な機会を通じて現在の計画を説明する中で、この電力供給の部分についても御意見を伺ってまいりたい。

◆内藤智司〈意見〉
 先ほどの議員の代表質問の中での市長の答弁にて、策定委員会に是認していただいたと。これは、市民環境委員会での副市長の答弁にも、この是認という言葉が度々使われてきた。市民環境委員会のメンバーとして、この問題を審査するに当たり、策定委員会の委員長にそのことを、我々は委員長を連れて、市民環境委員会で先生のところへ行こうとアポを取ったときに、「もう来ないでください」と断られた。

 その中で、市が言う是認ということに対して、策定委員会でされたのか?その是認という言葉は表現としては正しくないと、電話口で直接言われた。市の課の議事録を見ても、「是認をした」という議事録は残っているそうだが、それは改めて私は違うのではないかと思っている。

 委員長は、確かに市が決めることに対して策定委員会が口出しするのではない、見守っていくという表現はされたとおっしゃっていた。

 奈良市の未来を見据えた地域エネルギーセンターを核としたまちづくり及び新クリーンセンター事業の概要書が示された。これまで新クリーンセンターを、議会を中心に議論してきた際に、幾度となく語り合ってきたまちづくり構想をようやくここでまとめられたなと、改めての新鮮さを感じられないのが率直な感想だ。

 また、新クリーンセンター施設整備基本計画案概要版も一緒に提案された。初めて基本計画を示されたことになるが、概要版だ。その内容を精査して、一つ一つ取り上げて議論できるものにはなかなか及ばないのではないかと言わざるを得ない。我々議員がきちっと市民に説明できる基本計画を示していただくことが、議会での議論を始める前提ではないかと考える。

3.奈良市八条・大安寺周辺地区まちづくりについて
◆内藤智司 
 まちづくり検討の進め方と方向性について、現在、NARAグリーンスマートシティイノベーションプラットフォーム研究会、「G-SIP研究会」が設置され、まちづくりコンセプトの検討が実施されており、その研究会に参画する企業、大学等より積極的な意見出しが行われていると聞いている。

 このG-SIP研究会とはどのような位置づけで設置されたものか?

 2点目として、まちづくりコンセプトを検討する研究会であるにもかかわらず、参画するメンバーに地権者が含まれていない。本まちづくりは民間開発の土地区画整理事業であり、地権者をはじめ地域住民の意向を踏まえることが欠かせないと思うが?研究会で策定したコンセプトを丁寧に地権者へ説明し、合意形成を図っていく必要があると考える。

 3点目に、今後、新産業拠点を目指し企業誘致を行っていくが、市が民間開発に意見出ししていくからにはそれなりの支援が必要と考える。市はどのような支援策を考えるのか?

 4点目に、今後の検討スケジュールについて、令和6年度はどのような検討段階を迎えるのか?また、今後、G-SIP研究会はどのような役割を担っていくのか?

◎市長(仲川元庸)
 JR新駅や京奈和自動車道仮称奈良インターチェンジの整備により交通結節機能を生かし、組合施行による土地区画整理事業を現在推進している。

 令和4年度よりこの事業に向けた調査設計等業務委託を行い、関係機関との調整及び地域の方々、地権者の方々との意見交換を行っている。

 現在、NARAグリーンスマートシティイノベーションプラットフォーム研究会、通称G-SIP研究会については、委託業務の一つとして、受託会社で昭和株式会社において設置され、本市も事務局として参画している。

 その目的としては、ゼロカーボン技術及び先端技術の実装に向けた研究活動です。内容は、新産業創造拠点を対象に、まちづくりのコンセプトなどの提案・検討、また取組メニュー、アイデアなどの提案・研究等の活動だ。

 次に、そこになぜ地域住民が参加をしていないのかについては、新産業創出拠点においては、ゼロカーボン技術及び先端技術の実装に向けた研究活動を行うことを目的としていることから、まず、ゼロカーボン技術や先端技術をお持ちの企業や大学などからアイデアや提案をいただきたいと考えている。

 今後は、この研究会で取りまとめを行い、まちづくりのコンセプトなどとして地域の方々や地権者の方々への説明にもつなげたいと考えているところだ。

 次に、民間が行う事業に対してどのような支援を行うのかについては、現在、組合施行の土地区画整理事業を推進しているが、具体的な支援策としては、土地区画整理事業の収入を確保するための国費措置に向けて、国との協議を進めている。さらに、事業に伴い土地が使用できない期間については、地権者の固定資産税や都市計画税を免除するため、奈良市八条・大安寺周辺地区土地区画整理事業に係る固定資産税等の特例に関する条例の制定について、今議会に提案を申し上げている。

 次に、令和6年度のスケジュールと今後のG-SIPの役割については、事業計画案を基に業務代行予定者を決定する。この事業計画案に地権者の方々の同意が得られれば、令和7年5月の市街化区域編入等の都市計画決定、そして、併せて土地区画整理事業の事業認可を進めていきたい。

 このG-SIP研究会は、土地区画整理事業の進捗状況に合わせて、将来的にエリアマネジメント組織としての移行可能性について検討していきたい。

◆内藤智司
 今後は、地元のニーズを十分に踏まえた持続可能なまちづくりを実現するとともに、企業が当該地に拠点を構えたいと思うようなビジョン、支援策を検討してほしい。

4.市役所の組織体制と機能について
◆内藤智司 
仲川市長が就任以来、取組をされてきた定員適正化計画におけるこれまでの評価については?

◎市長(仲川元庸)
 直近の計画は、平成28年度から令和3年度の6年間を計画期間として策定し、適正化を図り、令和4年4月1日時点では2,600人の計画値に対して2,565名であり、計画値を35名下回った職員数となっている。

 この計画期間においては、業務のアウトソーシング、施設の指定管理の推進、幼保施設の統合再編、民営化委託の推進、部の再編、課の統廃合、事務の見直し等、行財政改革の推進とともに職員数を適正化してきた。

 一方で、依然として総務省の地方公共団体定員管理調査による定員管理診断表においては、中核市との比較においては、特に民生部門、衛生部門、教育部門において職員数の超過が生じている。

 また、奈良県の人材不足は厳しさを一層増しており、南都経済研究所が昨年行った調査結果によると、正社員が不足している職種があると回答した企業は70.1%だった。業種別で見ると製造業が69.9%、非製造業が70.3%となり、特に非製造業としては、5年前よりも4.7ポイント高くなっている。

 そのため、一層の人口減少社会への対応が必要と考え、行政需要の増加に比例して組織を肥大化させるのではなく、真に行政として対応しなければならない政策や課題、新たな行政需要、これらに重点的に取り組むことができる体制を構築することが重要であると考えている。そのため、新たな定員適正化計画においては、令和4年度から令和8年度までの計画期間で100名の職員削減を目指す。

 今後の課題としては、人員が減ることによる職員への業務負担増加が考えられるので、既存の業務をしっかりと見直し、さらなる民営化や委託、デジタル化の推進などによる業務の効率化により、限られた経営資源の中でも最大限の効果を発揮できる体制を目指したい。

◆内藤智司 
 市長には今答弁していただいた中で、意に反するところの意見も申し上げるかも分かりませんが、特に両副市長、ここにおられる理事者の皆さん、いまだに懸命に公務のために働いておられる職員、それから、これまでこの市役所を退職された職員のこと、この春にこの職場を離れようとされる職員のこと、これらを思いながら聞いていただければありがたい。

 公務員の人事は、議決を要する給与制度や定数条例等以外、職員の任用などは市長の専権事項。しかしながら、その専権を行使された結果、市役所組織の機能低下を招き、行政サービスの提供に支障を来すようになってしまうと、議会としても取り上げる必要が出てくる。

 近年の奈良市役所は、各部署が正常に機能しているのかという疑問が湧いてくる。例えば、頻発する議案書の誤りは議会の円滑な審議を妨害するものであり、看過できない。また、各部署でもヒューマンエラーは続発しており、情報漏えいやハラスメント事象など、職場の不祥事も起こっている。

 さらに、行財政改革及び公共施設等検討特別委員会を設置して審議することになった、幼保再編に端を発したふれあい会館や飛鳥公民館問題、総合福祉センター問題においては、市役所内部の政策決定プロセスの在り方に疑問を感じずにいられない。

 このようなことが続いているが、それには必ずそのようなことが続いて起こってしまう原因があるはずで、私たちはその大きな原因が、市長の進めてきた人事施策と市長のマネジメント手法にあるのではないかと考えている。これまでから注視し、議会でその都度取り上げてきた。

 まず、その原因の筆頭に挙げられるのは、定員適正化計画による職員数の削減の取組。

 市長は就任以来、人件費の削減を課題として取り上げられ、職員給与の独自カット、手当の見直しとともに職員数の削減に取り組まれてきた。その取組自体を全て否定するものではないが、その拙速さ、削減する職員数の根拠のなさに危機感を抱いており、事あるごとに指摘してきた。

 削減の手法として、本市は市役所の業務を切り分け、定型的な業務は会計年度任用職員や民間に委託するなど非正規職員が担い、非定型的な判断を要する業務は正規職員が担うこととされている。そのような手法で正規職員の削減を行われ、平成23年に約3,000人いた正規職員は、最近では2,500人となっている。

 しかし、職員数削減の基とするために策定されている定員適正化計画の内容は、事業を廃止したり事業の手法や担い手を変更したりすることにより減少する正規職員の業務量を緻密に計算した上で、必要となる正規職員数を算出、積算されたものではなかった。単に目標とする職員数を掲げ、その目標を実行させるためだけのものにすぎなかったのではないか。

 そのような方法で各所属の正規職員数を削減されてきたが、不足する職員数を補うだけの会計年度任用職員などの非正規職員は、業務量に見合った人数を配置されることなく、各所属に与えられる戦力は根拠に乏しいものとなっている。このような状況では、本来行うべき業務を忠実に行うことは難しい状況となっていると聞いている。

 しかも、最近では働きやすい職場を目指し、男性職員の育児休業取得などを推奨されている。女性職員だけでなく男性職員も育児に参加することは非常に有意義なことであると考えるが、職員数を削減され、本来の業務すら行うことが難しくなっている職場で、さらに育児休業取得により貴重な戦力が不在となれば、その職員が担っていた業務はどうなるのか。誰が行うことになるのか。

 本市は、業務の切り分けを行って、正規職員は判断が必要で企画力が必要なコアな業務を担っているはず。しかし、本市の場合、育児休業の代替職員はほとんどが会計年度任用職員となっているようだ。育児休業取得を奨励するのであれば、代替職員は本来、正規職員を確保するべきではないか。

 職場の風通しは閉鎖感を漂わせ、働きやすい職場の実態はヒューマンエラーを引き起こす要因にもなっているのではないか。いずれにしても、定員適正化という、市役所が行うべき業務が適正に行うに足りるものであるべきと考える。削減することばかり、言わば職員数をこれだけ減らしましたという数字ばかりにとらわれて、本当に適正な戦力で市役所を運営しているのか、現状を振り返ってみてはいかがか。

 次に問題があると考えるのは、人事異動での職員の任用について。

 職員数の削減を進め、少ない職員数で組織を機能させようとすると、管理職や係長への任用をはじめとする適材適所の配置などを果たすため、人事異動の役割は非常に大きいものとなる。人事異動には市役所組織の活性化や職員のスキルアップ、不正の防止など様々な効果が期待できる。

 しかし、人事異動を行うに当たって明確な目的を定めて、その目的を果たすために適切に行うことができないと、異動対象となる職員の選定を見誤り、十分な効果が得られないものとなってしまう可能性がある。

 また、人事異動を適切に実施することで、組織だけでなく異動の対象となる職員の能力向上、モチベーション向上など、様々なメリットが期待できる。ただし、これらのメリットを享受するには、適材適所の人事配置をしていることが前提となる。

 当たり前のことだが、この前提となる適材適所の配置というのは、職員の能力や適性を把握した上で、それに適合する部署やポストに配置するということだ。そのことから、この適材適所の配置を適切に行えば、職員が持てる能力を発揮し、市の進める事業の円滑な推進や組織全体の成長を図ることにつながる。しかし、職員の能力や適性の把握が不十分なまま人事配置が行えば、職員のモチベーションや生産性の低下を引き起こす要因になってしまう。場合によっては、人事異動をきっかけとして離職を招くケースもある。近年、その事例も数件発生しているのではないでしょうか。これは役所だけはなく、企業でも同様だ。では、本市は適切にされてきたのか。

 まず、人事異動の一つである管理職等の昇任人事について、市長は、女性の管理職登用、管理職の若返りを図ったと、管理職比率や管理職登用年齢を示して市役所組織が活性化されたかのようにPRされている。しかし、実態はどうか。管理職に登用された女性職員が、定年まで勤めることなく早期に退職されるケースが増えていないか。

 また、管理職試験の受験者の減少からそれを廃止され、試験に合格しなくても管理職に任用することが可能となった。管理職の若返りが図られたというものの、実態は十分な経験を積むことなく管理職に登用され、管理職に登用されてから戸惑う職員が増えていないか。

 このことが原因となって、管理職の前段階の係長昇任試験の受験をちゅうちょすることとなり、その受験率は以前に比べて極端に低下していると聞いている。参考に、平成30年度に受験率が男性73%、女性53%であったものが、令和5年度には男性66%、女性に至っては17%、合格者数は男性43人であったものが令和5年度には31人、女性に至っては25人であったものが現在、令和5年度では7人、こういった数字が示されている。

 また、本市は女性の管理職比率を飛躍的に伸ばされた。女性職員が管理職に登用され、その持てる能力を十分に発揮してくれれば、複雑・多様化する行政ニーズに応えることが可能となり、有意義なことでもある。しかしながら、女性管理職比率という数字にとらわれ過ぎているようなことはないか。その数字にとらわれ過ぎて女性の能力や特性を生かすことができなくなっていては、本末転倒だと考える。

 早期に退職する職員が増えたり管理職になることをちゅうちょするようなことでは、女性職員の活躍に逆行するのではないか。このようなことからも、本市の人事異動での職員の任用は、職員の能力や適性を見極めた上で適材適所にされていないのではないかと考える。

 次に、少ない職員数で行政運営を行おうとすれば、適材適所の配置に加えて、一人一人の職員の能力を向上させる取組、いわゆる人材育成の重要度が高くなる。この人材育成が十分にできていないにもかかわらず、少ない職員数で業務をやらせていては、組織としては機能しない。

 これまで行政組織は正規職員が主になって運営を行うこととなっていたが、定型的な業務であっても、正規職員の代わりに非正規職員が担うことになれば、より適切に、そしてより高度なマネジメントをする必要が出てくる。そうなると、これまでよりもマネジメント力を高める教育をしなければならないと思うが、その教育はされているのか。

 最近頻発する会計年度任用職員の不祥事は、単に採用した職員が悪いというだけではなく、マネジメントをするほうにも問題があるのではないか。

 また、12月定例会の我が会派の代表質問で、飛鳥公民館問題において、当時の子ども未来部長の行動は、権力者である公務員の中立性や全体の奉仕者としてふさわしいものであったかという視点で意見をした。そもそも公務員の原点でもあるようなことを、この議会で言わなければならないほどの事務レベルになってしまっているのではないかと危惧する。

 ここまで機能低下してしまう姿を、市長は一体どのように思っているのか。このような姿を目指していたわけではなく、市役所をよくしたいと思っておられたと思う。私は、このようになってしまうまでに手は打てたと思っている。

 市長は3期目のマニフェストで、「これまでの2期8年においては改革のスピードを上げるため、トップダウンで大なたを振るうこともございましたけれども、次の4年間では職員自らが自己変革する内側からの市政改革を目指してまいりたい」と、トップダウン手法を見直すと述べられた。私は、そういう取組をされようとしていることに、市役所はよくなっていくのではと期待したことを記憶している。

 本当にそのように変わることができるのかと疑心暗鬼になりながらも、変わっていくことを期待していた職員は多くおり、研修を受け、自ら行動を振り返り、反省すべきところは反省し、自分の行動を意識して変えるなど懸命に取り組まれたとお聞きしている。

 しかし、自分でマニフェストに掲げられた市長は、トップダウンの方針を改めることなく、本来なら職員に任せるような細かいことまで指示を出し続けている。その結果、職員は自ら考え行動することを諦め、上司の指示を待つようになり、納得する根拠を持たずに、市長がおっしゃっているからと、市長の言うがままに業務を行う組織へと突き進んでいるように思う。御自分で言ったことであるからこそ、まずは本気になって御自分の行動を変えようとされていれば、奈良市役所はこんな状態にはなっていなかったのではないかと残念でならない。

 このようなトップダウンの組織では、コミュニケーションは上司からの一方的なものとなり、部下から上司へのコミュニケーションはできなくなり、特に悪い情報は届かなくなる傾向にある。本市も同様で、市長には聞こえのよい情報しか届かなくなっているように思う。本当のことが伝えられなくなっているのではないか。

 先日の特別委員会でも、議員から市長に伝えてほしいと副市長にお願いしていたことが伝えられていなかったことが判明した。市長の側近中の側近であり、他のどの職員よりもコミュニケーションを取りやすい副市長でさえ、市長に伝えてほしいと言っても伝えられない。特別職の副市長でさえ伝えられないのだから、一般職の職員に市長にちゃんと伝えてほしいとお願いしても、市長にそのようなことは言えませんとなるのは不思議ではないと感じている。

 市長は、御自身に本当のことが伝わっていると思うか。トップダウンやパワハラは職場によくある現象だ。もう本当のことが伝わらない組織になってしまったのではないか。あのときは市長自らトップダウンで指示を出していたことであっても、辛抱され、職員を信じて待つ忍耐力があれば、今この市役所はこんな集団になっていなかったと考える。

 最後に、転職へのハードルが低くなっていることから、離職する職員が増えているのは奈良市役所に限ったことではない。しかし、離職するのは若手職員だけではなく、女性職員だけでもないという現状だ。また、中堅からベテラン職員、男性職員も女性職員も、離職を考えている職員は多いと聞いている。少し異常ではないか。

 このままでは、奈良市役所から人材の流出が止まらない。また、募集しても採用に至らないケースも増えいる。もう既に人材の寄りつかない組織になってしまっているのではないか。これは本市にとっては大きな損失であり、取り返しがつかないほどの大問題になっていることに気づくべきだし、市長自身、既に気づかれているのではないかと心中を察するところだ。このことに責任を感じるべきだ。

5.女性活躍を目指した管理職登用の評価と人材育成について
◆内藤智司
 女性活躍を目指した管理職登用の評価については?
また、現在、本市の正規職員約2,500名に対し、会計年度任用職員が2,000人を超え、全体の半数を占める割合となっている。正規職員は入庁以来、階層別研修、人権研修、コンプライアンス研修等様々な人材育成の機会を経てきている。その一方で、半数を占める会計年度任用職員のスキルや公務員としての人材育成をどのようにされてきたのか?

◎市長(仲川元庸)
 女性の管理職登用は、異なる経験や視点からのリーダーシップやマネジメントにより組織の活性化が見込まれる点で、非常に重要なことだと考えている。

 奈良市としては、これまで奈良市女性職員活躍推進ポジティブ・アクションプランの策定と取組の実施などを進めてきた。これにより、平成26年には16.8%だった女性管理職比率が令和5年には35%に到達した。また、男性育休の取得率もこの数年で5倍以上に増加をするなど、多様な働き方を認め、働きやすい職場風土の醸成に効果をもたらしている。

 また、効果的な少子化対策の推進や子育て世代の移住・定住の促進など、政策立案や意思決定の場に多様性が生まれることで、より市民ニーズに寄り添った施策が生み出されていると考えている。また、能登半島地震においては、避難所運営や人的・物的支援に関して女性の視点を取り入れる重要性が改めて認識された。

 今後も女性活躍の推進により、奈良市職員が男性であっても女性であっても、仕事でもプライベートでも活躍でき、生き生きと働ける職場風土の醸成と市民サービスの向上、業務の効率化、生産性の向上などにつなげたい。

 会計年度任用職員の人材育成の必要性については、人口減少社会に対応した職員の適正化の取組を進めていく中では、各職場の業務課題の解決に向け、正規職員が担うべき業務を見直して業務の効率化を図る必要がある。そのため、円滑に行政運営を行うためにも、多様な能力を持つ会計年度任用職員の果たす役割は大きくなっている。業務の責任、また困難度に応じて処遇の見直しも適宜図っている。常時変化する行政需要に対応するためには、これまで以上に会計年度任用職員の活用が必要不可欠な状況であると認識する。

 このような中において、現在は各職場での研修や業務を通じて必要なスキルを身につけており、令和6年度からは勤勉手当の導入を予定し、さらなる人材の育成、また、会計年度任用職員も含めた目標管理、進捗管理により一層取り組みたい。

6.子どもセンターの現状と今後の課題について
◆内藤智司
 児童相談所開設準備中の人材育成と開設後の人材育成と、その経過については?
 次に、児童相談所開設後2年がたとうとしているが、職員体制の状況については?
 3点目、現在の児童相談所としての課題は何か?その課題に対してどのようにしていくのか?

◎市長(仲川元庸)
 児童相談所は子供の安全と最善の利益を守り、子供たちの将来の夢を育み健全に自立していけるよう、子供や家庭に対し支援を行っている。

 児童相談所に従事する児童福祉司及び児童心理司には専門性の高いスキルと経験が必要となるため、開設前から奈良県をはじめとする近隣の児童相談所へ管理職4名を含む22名の職員を派遣するとともに、他の自治体の児童相談所の指導者、また児童福祉専門機関のアドバイザーを招聘し研修を行うなど、人材育成を行ってきた。

 令和4年度の子どもセンター開設時には、派遣研修で養成した職員、また他の児童相談所で豊富な業務経験を持つ職員、そして、新たに異動などで配置した職員で業務をスタートした。

 開設後においても人材育成には特に重点を置き、センター内での研修、外部機関への研修派遣、また職場内でのOJTなどを随時行っている。

 次に、子どもセンター開設後の職員体制については、児童相談所では様々な背景を持つ家庭への支援として、子供や保護者への助言、指導や関係機関との調整業務などを行っている。

 児童相談所の業務の特徴として、子供の安全を守るため、保護者の意向に沿わないような法的な対応を取る場合も多くあり、このような場合には相手との信頼関係を構築することが困難となり、時により職員のモチベーションを維持することが難しい状況もある。一方で、支援によって良好な家族の関係性を築くことができたことにより、子供が安心した表情で見せる笑顔に励まされ、モチベーションが上がる職員ももちろんいる。

 このようなことから、人事考課や自己申告制度も活用しながら職員の業務への適性の把握に努め、児童相談所としての業務スキルを維持しながら職員の適正配置を行っている。

 本市としては、今後も遅滞なく子供の最善の利益につながる取組を進めていきたい。

 次に、今後の課題、そしてその改善策については、児童虐待相談対応件数は毎年増加しており、子どもセンターが扱う案件も複雑化しているため、子供の権利が脅かされかねない状況が常に生じている。児童相談所という専門性の高い業務を継続し、さらに向上させていくためには、従事する職員の人材育成、そして組織としての対応力を蓄積していくということが重要だと認識している。

 子どもセンターでは、職員のレベルに応じた職場内研修を企画、実施するとともに、外部の研修への出席も積極的に促し、ケースワークの助言・指導を行うスーパーバイザーの体制整備も行いながら、業務のスキルアップに努めている。

 また、職員ができる限りモチベーションを高く持ち、業務に打ち込めるよう、心のケアにも十分配慮をしながら職場の人材育成を行っている。

 業務の負担軽減という部分では、DXの導入に市を挙げて取り組んでいることもあり、さらなる事務の効率化を目指したい。

 業務を円滑に進めていく上で、職員の体制の整備・充実についても必要なものだと認識しており、今後、段階的に拡充を図っていきたい。

◆内藤智司 
 今の答弁で、子どもセンターの現状が市長のところには届いていないということがはっきり分かった。

 今、子どもセンターは本当に必死で、瀕死状態であるということを市長自身が見るべきであり、そこへやはり伝えるべきだと思う。

 議案書を間違っても、鉛筆で消し、ワープロで直して、頭さえ下げればそれで済む。子どもセンター、児童相談所をつくるときに、我々は議会一丸となって言った。やっぱり命を預かる職場、そこに対して、命がけで我々は取り組まなければならないと。私は、一心に今の子どもセンターを振り返り、体制を立て直さなければ、事件が起きてからでは遅いと思う。命を預かる職場だけに、担当部を中心にもう一度振り返って、体制の見直しを行ってほしい。