平成30年9月定例会 09月10日

平成30年9月定例会 09月10日

【1、児童福祉及び児童相談所設置について】

【2、平成31年度の予算編成について】 

【3、財政における課題について】

【4、市長への質問・答弁】

【5、その他 意見・要望】

【1、児童福祉及び児童相談所設置についての質疑応答】

◆内藤智司 

 市長はマニフェストに掲げた「中核市における児童相談所の設置」に向け、現在も精力的に取り組みをされている。平成28年度に児童福祉法の一部が改正され、中核市においてはおおむね5年を目途にということで、本市においては平成33年度の開設を目指すとの方針を明らかにされている。

 今回の改正の中では4つの大きな柱がある。

1つ、「児童福祉法の理念の明確化」、

2つ、「児童虐待の発生予防」、

3つ、「児童虐待発生時の迅速・的確な対応」、

4つ目「、被虐待児童への自立支援」とされている。

  このことを踏まえ、市長はこれまでの児童相談所の業務に加えて子供の最善の利益を優先し、さらに子供の自立を支援するような施設を目指すとの方針も示されている。奈良市が目指す児童相談所とはどのようなものなのか?

 また、児童虐待等により子供たちの一時保護を行うことも必要な業務の一つだ。しかし、一時保護をされた子供たちは、虐待を受けたこと、保護者から離れて生活することなど、大変なストレスを感じることになる。そのような子供たちのために、どのような一時保護所を目指しているのか?

◎子ども未来部長(真銅正宣) 

 これまでの児童相談所は、児童虐待において子供の安全を守るために、「保護者の意に反した一時保護や施設入所措置などの介入的な支援により、保護者と児童相談所との間で良好な関係が築けない場合もある」と言われている。

 しかし、中核市である本市では、介入的な支援だけではなく、既存の子育て支援や母子保健、障害児支援など、連携した支援をきめ細かく一体的に行うことができると考えている。さらに、地域社会全体で子供を守ることを目指し、関係機関との連携を進めることもできると考えている。それらを踏まえて、市民にとって相談しやすい児童相談所を目指していきたいと考えている。

 次に、奈良市が目指す一時保護所については、児童相談所所長は、児童虐待などの理由により子供を家庭から引き離す必要がある場合や、子供の行動が自己または他人に危害を及ぼす場合においては、一時保護を行うことができる。一時保護をされた子供にとっては、保護者からの分離、また保育所や幼稚園、学校に通えないなどの制約を受けることになってしまう。子供の最善の利益を守るために一時保護するものだが、そのような状態においては、子供の権利が最大限尊重される必要があると認識している。

 本市が目指す一時保護所については、安全で安心できる環境を保障するとともに、職員が一人一人の子供の思いに十分に向き合い、適切なケアが提供できる施設を目指したい。

◆内藤智司

 この事業で最も重要なのが、専門性の高い職種であることにおける計画的な人材の確保、人材育成の人員計画であると考えるが、このことについてどのように考えているか?

◎副市長(向井政彦) 

 児童相談所に関する業務については、担当する職員の熱意はもとより、高度な専門性が求められていると認識していて、配置する職員の確保、育成が最も重要であると考えている。その中でも、人材の育成については、一定程度の時間を要してくることから、今年度から県のこども家庭相談センター、これは奈良市内と大和高田市内の2カ所にあるが、それぞれに職員を派遣して、研修、育成に取り組んでいる。

 また、専門職の採用については、平成31年4月までの3カ年で30名を採用し、確保する計画を立てている。今後も児童相談所の開設に向けて、必要な専門職の確保に努めたい。

◆内藤智司

 奈良市における児童相談所設置については、奈良県への職員の派遣研修や有識者会議の設置等、準備は進めているということで、既にこの設置に向けてはスタートを切ったという受けとめでいいかと思う。

 しかし、児童相談所設置は、この奈良市においては大変重大な事業である。このことから、児童相談所設置に向けた基本方針策定は不可欠だが、どう考えているのか?

 2つ目、児童相談所、一時保護所を奈良市において設置する場合の施設の設置費用と新規で用地を取得した場合の財源について。さらには人件費などランニングコストとその財源措置についてどのように見込んでいるのか?

◎副市長(向井政彦) 

 児童相談所設置に向けては、その施設整備、人員体制、支援体制等、本市としての児童相談所のあり方をしっかり計画していく必要がある。現在、有識者による意見や奈良県及びその他の自治体等の状況を参考に検討を続けている。特に人材確保、育成については時間を要することから、先行して取り組んでいる。

 児童相談所設置事業については、本市における重要な課題、施策であり、全庁的に取り組んでいく必要があると認識している。今年度中には本市に児童相談所を設置する目的や施設、人員体制などの概要を明らかにした児童相談所設置計画を策定し、開設に向けて計画的に取り組みたい。

 費用、財源等については、まずイニシャルコストだが、施設整備費及び用地取得費等については、現在、児童相談所の設置場所、設置候補地の選定作業を鋭意進めている状況で、まだその費用を明確にはでないが、候補地が決まったら、具体的な内容も算出できるものと考える。 そのイニシャルコストの財源については、用地取得費を除いて、児童相談所に係る施設整備は総事業費の2分の1について地方交付税措置が講じられる。また、一時保護所に係る施設整備費は、入所定員等により算定された基準額の2分の1相当が国の次世代育成支援対策施設整備交付金により財源措置される。

 次に、ランニングコストだが、これはあくまで平成30年度の奈良県における児童相談所と一時保護所に係る予算などから本市分を算定した結果だが、年間のランニングコストは約10億円程度になる。その財源としては、施設入所措置費や非常勤職員経費等について、国からの補助により約3億円程度財源措置をされる。残りの差額については、地方交付税措置が見込まれる。

【2、平成31年度の予算編成についての質疑応答】

 ◆内藤智司

 事業評価における予算と決算の関連性について、平成31年度の予算編成方針や編成要領では、思い切った見直し、事業の見直しの徹底という方針が指示された。

 ここ数年の予算編成では、行政評価による見直しであるとか政策効果の乏しい施策の見直しを行うなどの方針が示されているが、どうもこの過程と効果が見えてこないように思う。新年度予算編成においてはどのように見直しを進めているのか?

 また、行政評価は確かな施策の効果検証という意味では必要だと思うが、予算編成においては予算と決算の比較とその検証がより大切であると思う。しかし、現状は議会の審査が決算は決算、予算は予算の審査となり、予算と決算の関連性や連続性がなく、比較と検証が見えにくい資料ではないか。平成25年度の予算では、財政課にお願いをして事業ごとの予算説明調書を作成し、今日に至っているが、当時の想定では、予算版に対して決算版へと発展してもらうのが狙いだったと記憶している。

 予算で計画した事業が効果的にかつ効率的に執行されたかどうかは、決算を見て予算編成の中でしっかりと検証すべきだ。しかし、29年度の決算はまだ今議会で審議をしている段階で、議会からの意見や指摘も予算に反映すべきだ。決算の分析や議会からの意見は予算編成にどのように反映されようとしているのか?

◎財務部長(辻井淳)

   編成方針において「全ての施策を再検証し行財政改革を断行」と掲げ、全ての施策について市民ニーズの観点からの事業の真の必要性、各施策によりどのように市民福祉が増大するのかといった観点から、廃止も含めた思い切った見直しを行うことにした。こうした見直しを着実に実行すべく、予算編成を進めたい。

 また、予算要求において、その時期を前倒ししたことにより、決算の分析及び決算審議における議会からの意見等が十分に反映できないのではないかという質問については、今後の予算査定において反映していくべき点については、随時適切に対応したい。

【3、財政における課題についての質疑応答】

◆内藤智司

 今後の人件費の方針、方向性については?

 7月に発表された予算編成方針において、基本方針の一つとして「全ての施策を再検証し行財政改革を断行」という方針が掲げられ、その中で特に人件費の適正化と「担い手」の最適化という項目が挙げられている。この中で、民間委託や非正規職員の活用など、業務遂行の担い手のあり方の再検証と組織の見直し、また人件費を含むフルコストの視点での生産性向上を図ろうという方向性が示されている。

 こうした方針から、行政の業務を正規職員だけではなく、できるだけ民間委託や非正規職員にシフトをしていこうという思いが見えてくるが、確かに正規職員は定員適正化計画で2,500人まで減らす計画となっており、この計画を達成しようと思うと実感としてはかなりの数の職員を削減していくことになるのではないか。これまでの職員削減では、職員一人一人の業務量が増える一方、時間外勤務の削減、上限枠が厳しくなり、職員の業務負担、精神的負担が増してきているような現状にも懸念している。

 一方で、職員の採用状況を見ると、児童相談所設置の準備に向けた増員など、職員増加の要因もあり、定員適正化の達成は無理ではないかと疑問を感じる。

 本市の財政状況は今議会に提出をされた決算を見ても、経常収支比率100%を2年連続で超えており、黒字とはいえ極めて厳しい状況と思われ、財政の健全化も急務である。  今後の財政運営における人件費にかかわる方向性については?

◎市長(仲川元庸) 

 職員の適正化もかなり進んでいるので、個々の職員が抱える負担も大きくなっていることは理解している。一方で、本市の置かれた財政状況も鑑みると、今後も必要な行政サービスは維持し、持続的な財政運営を行っていくためには、やはり総人件費をどのように抑制していくかという視点が大変重要だ。

 やはり、職員数の適正化ということは、これまでどおりしっかりと緩めずに進めていくということが重要だと思っているが、一方で、児童相談所については、従来の業務から追加的に行うものなので、この増については既に今年度当初の分においても、従来の定員適正化計画に加えて純増する部分と認識している。それは少し特殊要因だが、中長期の定員の適正化ということ自体は、今後も引き続きしっかりと進めていく。  また、一方で、効率的かつ効果的な行政運営を行うための、非正規の活用、また民間委託の推進ということについても、行政が抱えるさまざまな業務を、その内容や質、難易度などによって適切に担い手を切り分けることが大変重要だ。

 社会情勢の変化、また行政需要の多様化にも対応できるよう配慮はしながらも、人件費総額を抑制していくという基本方針についてはしっかりと掲げた上で、着実な財政運営を進めたい。

【4、市長への質問・答弁】

◆内藤智司

 1つは、31年度予算編成方針を3カ月前倒しした大きな目標の一つは、業務の平準化とされている。これから予算ヒアリング等、日程に入っていくが、あすへの宿題を残さず、せめて21時には市役所を退社できるように徹底すること。

 2つ目は、私たち議員の任期はあと3年足らず。その間、何人かの特別職の任期を迎える。先般の3月定例会で議会の判断とした特別職の退職金の議論は、今任期においては今後ないと受けといいのか?

◎市長(仲川元庸)

  予算編成にかかわる職員の負担を減らすということについては、経年でしっかりと評価をして、特に予算の編成作業の手戻りがないように、余計な手間が生じないように工夫していきたい。 基本的にはそれぞれの原課がしっかりとした事業計画、そして予算を編成することが第一義だが、その後の査定やまた事業計画の立案、査定行為においても、早い段階で特に大きな方針転換等が生じる場合には、明確な方向性を指示し、余計な手間や手戻りが生じないように努力していきたい。

 また、特別職等の退職手当の取り扱いということについては、これまでの議会の意見、意思も踏まえた形で判断をしたい。

【5、その他 意見・要望】

◆内藤智司

  財源措置については国・県との措置がかなり前向きな状況かと思う。

 先日、三重県津市の児童相談所に視察に行ってきた。4つの基本方針がある中で、一時保護所も含めて何を求めていくのかを、施設の鈴木所長が「保護をするということに対して、その子供の人権を守らなければならない」と話された。

 もう一つ思ったのは、やはり子供の命を守るところである。命にかかわる仕事であるということを、気概を持って話された。保護しなければならないのか、しなくてもいいのかという迷いのあるところについては、「全て保護するのだ!」それで間違いだったら親元へ返してあげよう。しかし、そこを一歩間違うと、やっぱりその子の人生、その子の命にかかわるというところを考えて、「疑いがあれば全て保護していく」こういった形でされていました。

 一時保護所も見た。運動場で遊ぶ子供たち、体育館でバドミントンを元気にやっている姿。声をかけると、こんにちはと笑顔で返してくれる。そのような子供の人権、子供を守るということに対して、非常に所長は信念を持ってやられていたなと感じ取れた。

 市が行う児童相談所のメリットというのはどこにあるのか? 「我々は、事が起きて一時保護をしなければならない、事が起きてからしか動けない。それを水際で、市民と直接接する事業体であるから、自治体であるから、そこからケアできるのです。産後生まれて、育児、そして発達支援、そういったところの子供の支援をしながら予防をしていける、その水際の事業もできることによって件数を減らせるのだ」と話された。  まさに、総合的な施設が、今後我々に求められていく相談所、一時保護所であろうと思う。そのためには、地域の住民の理解が不可欠だ。地域住民にとって少しでも生活がプラスになるような総合的な施設になればいいと思う。そのためには、児童相談所だけではなく、子育て支援の施設も一緒に整備できたら、その地域や奈良市に住む子供たちにとっていいのではないか。

 相談所はこれまで専門性の高い施設であり、敷居の高い施設であると嫌悪的なように思われていたが、子育ての支援センターなどを一緒に整備できたら、子供たちが集う広場であり、必要な子供たちには専門的な相談を受けられる。そしてまた子育ての支援ではボランティアの導入も可能になるなど、開かれた施設であればいいと考える。子ども発達センターや市の虐待対応の部署と一緒にすることにより、人員の連携などによる効率的な人員配置もでき、国のそれぞれの補助を最大限活用できるものと考える。本市の厳しい財政の中にあって、可能な限りよい施設がでればと考える。

 人件費については、民間や非正規の活用を重視されているが、今後、再任用職員はフルタイムとして雇用になり、要員としても整理されていく中で、その活用を重要視すべきと考える。長年築き上げてきたそれぞれの知識、経験をフルに活用できる仕組みを構築すべきと考える。

 財源や基本計画については、これからの奈良市は少子高齢化によりさらに行政需要が増大し、新斎苑の建設、クリーンセンターの移設問題、新駅などまちづくりの課題が山積している。また、庁舎の耐震化など、行政として解決していかなければならない。それには、まず財政計画を立て、計画的に推進する必要がある。

 29年度決算を見ても、何とか黒字を確保しているが、基金残高は前年度より減少し、経常収支比率は2年連続で100%を超えている。第4次総合計画の経常収支比率の目標値は95%以下だ。

 この目標を達成していくことが大切だ。

 そして、基金の繰りかえ運用の問題。

 奈良市地域振興基金40億円の期限は35年3月です。計画的にこの繰りかえ運用を解消するための手だて、具体的には講じられているのか?現状の財政状況を少しでも改善する努力が先決であり、32年度決算の経常収支比率を95%に少しでも近づけるよう努力すること。まずは自主財源の確保である。

 経常収支比率は2年連続100%を超え、経常経費が経常一般財源で補えない深刻な状況が依然継続しているこの極めて深刻な状況を打開していくことを切に要望したい。